表計算「作った本人が退職」会社で起きる大混乱 自己診断できる、デジタル化レベルチェックも
表計算ソフトは表を計算するためのソフトなので、表の外側とのデータ連係は基本的にできない、または機能不足です。したがって複数の部門間にまたがる仕事を表計算ソフトでこなそうとしても、おのずから限界があります。
仕方なく、表から表へデータのコピー&ペーストを頻繁にするようになり、その単純作業が社員の仕事の一部になってしまいます。こうなると、表計算ソフトはもはやデジタル化を阻む「業務のハードル」と言わざるを得ません。
この状態を私は、「表計算ソフトへの過度な依存がデジタル化を阻害している」と呼んでいます。
さらに、表のなかに高度な関数や機能が組み込まれていた場合、作った本人以外の人には判読がむずかしくなります。そのため、時が経過するにつれ、しまいには改造すらできない状態になります。
表をつくった本人が退職し大混乱
会社によっては、「この表を作った人はもう会社にいない。中身を修正したくても、難解でまったく理解できないからいじることができない。この表が運用できなくなったら、どうしたらいいのかわからない」こともあります。
実際、お客さまのところにお邪魔している際に、総務部門の担当部長が困った顔で「鈴木先生、この表が複雑で困っています。少し修正したいのですが、どんな処理をしているかわかりませんか?」と聞いてこられたことがあります。
その表を作った張本人はすでに退職しており、ファイルだけが残ってしまったそうで、表に数字を入れると必要な伝票が出てくる構造になっていました。しかし、中身の詳細は私が見ても皆目見当がつかず、早々に諦めるようにお願いするしかありませんでした。
このような会社でデジタル化を進めようとすると、業務内容を分析するために、その難解な表を読み解かねばならず、このために膨大な工数がかかることもしばしばです。
つまり、「表計算ソフトに入力すれば、後はソフトが自動的にやってくれる」といったことは誤解にすぎず、たいていの場合は表を運用するために、社員がかなりの時間をパソコン作業に費やしていたり、表計算ソフトがある日突然バージョンアップしていつも使っている表が使えなくなるなど、事業継続上危ない橋を渡っているのです。
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