「一姫二太郎」は子供何人?親の日本語力も深刻だ 「言葉の正しい理解」が"社会的トラブル"を防ぐ

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他の言葉の意味も確認していきましょう。

まだある、間違えやすい日本語の答え

③ 正➡餞(はなむけ)の言葉 誤➡花向けの言葉

「餞」は、「馬の鼻向け」の意を持ちます。

その昔、旅立つ人が乗る馬の鼻を行くべき方向へ向けて、去る人を見送ったという習慣から来ている言葉です。やがて、見送る人たちが去る人の旅立ちや門出の際に、品物やお金や詩歌などを贈るというならわしに変化していきました。

学校の卒業式などで卒業していく生徒たちに「餞の言葉」が贈られるのはよく見受けられるシーンです。

その際、花束の贈呈などもあったりしますが、その「花を向ける」ではないので、間違えないように。

④ 正➡取りつく島がない 誤➡取りつく暇がない

島は、すがるべき場所、しいては頼りになる人のたとえです。

困窮したときや相談事があるときなど、ぜひ親身になってもらいたいのに、どういうわけか、態度が冷たい。つっけんどんで知らぬそぶり。

話しかけるきっかけすらなくて途方に暮れてしまう……。

いわばそういう状況が「取りつく島がない」です。決して「暇がない」のではありません。「シマ」と「ヒマ」。音は似ていますが。

⑤ 正➡図に乗る 誤➡頭に乗る

「あいつ、“ず”に乗って……」と、人に腹を立てるときは、頭に血が上りがち。でも、乗るのは「頭に」ではなく「図に」なのです。

「図」とは、たくらみ、はかりごと、思うつぼ、などを意味します。

そして「乗る」には、調子づく、つけあがる、という意味が。

少し長めに言い直すと「自分の思いどおりに事がうまくいったからといって、いい気になって調子づいてるあいつめ……」と、いったところでしょうか。

⑥ 正➡的を射る 誤➡的を得る

弓で矢を放つ弓道では、あるいは投矢遊びのダーツでも、遠くにある的の中心に命中させることが一番。

そこから転じて、物事の最も大事な点を確実にとらえることを「的を射る」といいます。だから「得る」は誤り。

「的を射た発言」とか「的を射た質問」という褒め言葉がありますが、肝心な要点をしっかり突いているからです。

山口 謠司 大東文化大学文学部教授

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やまぐち ようじ / Yoji Yamaguchi

1963年、長崎県佐世保市に生まれる。
大東文化大学文学部中国文学科教授。中国山東大学客員教授。博士(中国学)。大東文化大学文学部卒業後、同大学院、フランス国立高等研究院人文科学研究所大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。
著書にはベストセラー『心とカラダを整える おとなのための1分音読』(自由国民社)、『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)などがある。

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