家族ごはん卒業50代で直面"ひとりごはん"の葛藤 料理家も感じた「難しさ」、たくさんの後悔も

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そして時は流れ、私のプライベートのごはん作りに変化が起こりました。

息子が高校を卒業したことでお弁当作りが終わり、さらに大学に入学したタイミングで、私も「家族のために作るごはん」を卒業したのです。

実に20年ぶりに夫婦2人の生活となりましたが、夫はほとんど家でごはんを食べないので、実質ひとりで食べる「自分のためのごはん」作りの環境へと変わったのです。

「自分が食べたいものを、食べたいときに食べればいい」

そう思ったとき、世界の中心で叫びたいくらいの解放感を味わいました。

誰にも追い立てられず、時間も気にせず、何の責任も負わず、自分の腹具合でいつ何を食べようが構わないという自由。

激辛カレーや山盛りパクチーのエスニック料理も、食べたいときに食べられます。夜ごはんのおかずが納豆だけでも、ビールと柿ピーで済ませても構わないのです。

自由だけれど乱れる一方の食生活

また、食材の管理もグッと楽になりました。

たとえば、自分へのご褒美用に冷蔵庫で冷やしておいたプリンが食べられてしまうことも、飲もうと思った麦茶のポットが、ほとんどカラのまま残されていることもありません。

つまり、冷蔵庫の中の食材をすべて自分の管理下に置き、誰にも荒らされない平和が訪れました。何が残っていて何が足りないのかを把握できているので、突然思い立って料理するときや買い出しのときもいちいち冷蔵庫を確認しなくていいのです。

ちょうど、ひとり暮らしを始めたときの感覚がよみがえりました。

しかし、こうして気ままな食生活を送りつつも、次第にそこはかとない寂しさと虚しさ、そして後ろめたさを感じるようにもなりました。

自由気ままな食生活は、料理を作るきっかけとモチベーションを見失い、乱れる一方でした。

自分ひとりのためにわざわざ用意するのは面倒くさいし、多少の空腹はつまみ食いで我慢してしまうようになったのです。

こんな生活では痩せてしまうのではないか!とあらぬ妄想を抱きましたが、食生活が乱れると間違いなく太ります。そしてメンタルは罪悪感と背徳感で常にモヤモヤしています。

仕事としてきちんと作る料理の反動で、ふだんのごはん作りは一層おざなりになっていきました。

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