つんく♂:あえて意地悪な質問をしますが、勉強なんてしなくていいとサボって、「あとから頑張ればいいや」って思い続ける、そんな人生ってありでしょうか。他の人のように収入が得られず、自立できない人生になってしまったら……って、親は心配しそうですよね。
孫:僕は全然ありだと思うんです。「今のうちに何かやっておかないと、後々ひどい目に遭うかもしれないよ」という考えは、一見、相手のことを思っているようで、そこで思考が止まっているという面もあるような気がするんです。
つんく♂:たしかに、それはありますね。人並みの生き方って、悪くいえば資本主義の歯車になって、税金を払うために、資本家に搾取されるために頑張って働くという側面もありますし。
孫:「あのとき、ああすればよかったのかな」とか「こうやって生きてきたけど、本当によかったのか」なんて、たぶん死ぬときにしか総括できないと思うんです。
たとえば苦しい下積みが長く続いて、20代、30代を闇雲に過ごしてきた人も、40代、50代で花開くかもしれないし、開かなかったとしても、もがいてきた経験や、そこで出会った人たちが人生を豊かにしてくれることもある。それは自分が決めることだと思います。
無責任に「頑張れ」と言えない時代
つんく♂:そうですね。たとえば僕は他人から見れば成功したと言われています。
その自分の経験則から、たとえば売れていない芸人さん役者さんに「もっと頑張れ」と言うことはできます。実際、好きなことなら努力できるし、努力すれば今日より明日のほうがうまくなります。自分自身がそうでしたから。
でも、本当にそれでいいのかという気持ちも、たしかにあります。
僕らの時代は、ミュージシャンならCDが売れれば、実入りもありました。でも、今はYouTubeで100万再生しても、そう簡単に金銭的な成功にはつながらないでしょう。時代が変わっているんだから、無責任に「頑張れ頑張れ」なんて言えない時代だなとも思ってしまいますね。