「どうせ社会は変えられない」諦めている人の盲点 田内学×近内悠太「お金と贈与」トーク【後編】
田内:僕の本以外にも、お金の本っていっぱい書店に並んでいるんですけど、大体お金の増やし方とか節約術なんです。
老後2000万円問題が出たときから、そういう本がよく売れてるイメージがあるんですけど、投資をしなきゃって方向に行ってしまいます。
お金が投資に回ったら株価が上がるから日本は復活するって本気で信じている人もいますよね。あとは、すべての原因は円安だから、日本の金利を上げさえすれば円高になって日本経済はよくなるんだと言っている人たちもいますし。だけど、そんな簡単な話じゃないんです。
近内:今がそんなに悪いのか、というのは、もっと考えてもいいと思います。昔は子どもが生まれてすぐ亡くなったり、戦争もあったり、もっと悲惨だったと思いますよ。
昔の人は、着ている服や乗っている馬車が違うとかで、明らかに見た目で身分の差がわかりました。でも今は、大富豪も市民も、見た目では見極めができなくてかなり均一化されています。
あったかい布団があって、清潔な水もあって、十分ではないかもしれないけどかなり上出来な時代になっていると思うんですよね。
まだ不満を言うのか皆さんは、と思うこともあります。
意識を変えると社会が変わる
田内:今の生活に満足するって話につながりますけど、最近の資本主義は行き過ぎていると議論されていますが、近内さんはどう感じていますか?
近内:僕には資本主義の「すきま」を埋めるという考えがあって、資本主義を絶賛もしていないけれども、否定もしていないんですよね。
資本主義というメカニズムがあって、民間企業があったから、アメリカは鉄道を走らせられたんです。
資本主義によって生まれたイノベーションがあるので、それを享受している我々が「やっぱり資本主義って悪役じゃん」っていうのは、違うかなとは思います。
ただ、資本主義単品だと問題が生じるのも事実だから、それを補正してあげる意味でも、身近な人の助けが必要になるんじゃないかなと。
田内:結局はシステムや制度を変えるだけじゃなくて、僕らの意識自体が変わらないといけないんですよね。