「どうせ社会は変えられない」諦めている人の盲点 田内学×近内悠太「お金と贈与」トーク【後編】
近内:こういうアイデアが各地で起こると、みんなハッピーだし、気づいたらケアが日常になっている気がします。もちろんすべての社会的事象に適用できる方法ではありませんけど。
田内:あったかいですね。
近内:いいことをしたいとか、困っている人を助けたいって気持ちもあるんだけど、そこに面白みがないと人を巻き込みにくい状況なんですよね。社会課題はたしかにいまここにある、でもそれを正面から真面目に取り組むだけでは、多くの人に関心をもってもらい、協力を取り付けることは難しい。
どうすれば、日常の中に認知症の人たちの役割や居場所を作れるかなと考えた結果、気づいたらケアになっていた。
こういうプロジェクトを知るだけでも社会は変えられると思うし、気がついたら社会が優しい場所になっていた、っていうのは僕の理想ですね。
社会を変えるのは政治家ではなく自分
田内:国を変えるのは政治家だと思っている人もいるかもしれないけれど、政治家は投票してもらわなきゃいけないから、有権者のことを考えているんです。
前の本を書いてから、政治家の人たちに「経済問題の原因の1つは少子化ですよ」って話をしたときに、若手の議員の方は十分わかっていました。
でも、地元で少子化対策しますって言うと、お年を召された方に「俺たちのこと見捨てるな」と言われちゃう。政治家って、力ありそうに見えても、当選しなかったらただの人なんですよね。
近内:そうですよね。
田内:だからこそ、僕ら1人ひとりの「意思の集合体」が空気を変えないといけないと思います。
本の中で、お金を使う行動が社会を決めているって話と同時に、ポリティカルな投票行動も大事ですよって話をしています。
「社会」っていうと、とてつもなく広くて国レベルの話って思うかもしれないけれど、そうじゃないんです。1人で国全体を変えることはできないけれど、身近な人たちと助け合うことで、社会がよい方向に進むと信じています。
近内:身近な人同士のケアが大事。そこであなたはまず何から始めるのか、ってことが求められますよね。
田内:最後にもうひとつ。お金はあくまで道具なので、社会を変えるためには、幸せになれるお金の使い方の教育が必要なんです。
今はお金の教育=投資教育になっていますが、「投資する側」の教育なんですよね。自分は投資をして誰かに課題を解決してもらおうとしているだけ。
他力本願な子どもたちばかり育てるって危機的な状況ですよ。「投資される側」を育てなくてどうするのって思っちゃいます。「僕が、私が課題を解決するから、投資をしてくれよ」と思う子どもたちを育てないと日本はよくなりません。
日本の社会を変えるために必要な考えだと思って本を書いたので、まずは親世代に手に取ってもらって、子どもと一緒に考えてもらいたいですね。
(構成:川口玲菜)
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