「どうせ社会は変えられない」諦めている人の盲点 田内学×近内悠太「お金と贈与」トーク【後編】
近内:そうですね。
田内:僕が、みんなで社会のことを考えましょうというと、田内さんは生活にゆとりがあるから社会のことを考えられるんですよってよく言われるんです。
でも、自分の子どもに将来幸せになってほしいと願うなら、子どもが生きるであろう未来の社会を変えなきゃいけない。僕が社会のことを考えようと言っているのは、だから僕自身のエゴでもあるわけです。
これは誰にとっても他人ごとじゃなくて自分ごとだし、社会を変えることで、みんなも幸せになれるんです。
ただ、それはなかなか難しい。日本がもっと困る状況にならないと「なんとかしないといけない」と思えないのかもしれないなとも思います。
社会を自分ごとにするためは想像力が必要
近内:本当に困ったことになれば、日本人も目が覚めるだろうっていうのは、もちろんそうなんです。
でも、僕らは人間なので、想像力によって、日本の破滅の瞬間を逆算してイメージできると思うんですよね。
なので、世界を想像する力、想像力を使って一緒に考えなければならないっていうのが、田内さんの本の後半のお話かなと思いました。
田内:破滅って、不可逆で元に戻らない状況なんですけど、時間も不可逆で戻らないんですよ。
だけど、普段は実感できなくて、身近な人の死があったときに、ようやく時間が不可逆だと気づくんですよね。これは宮台さんがおっしゃっていたんですが、最近では葬式に出る機会が減っていて、死を感じられなくなっているそうです。
今は家族葬が多くなっちゃったから、子どもは特に、本当に身近な人が亡くならないと葬儀に行く機会がなくなっちゃっているんですよね。
近内:同じことは二度と起こらないってことに、気づきにくくなっているかもしれませんね。
田内:不可逆な出来事の経験を重ねるからこそ、今を生きることの大事さがわかるのかなって思いますね。
近内:いろんな意味で傷つき足りていないから、まだ何とかなるでしょって思ってしまうけど、都合のいい解決方法ってないんですよね。