焼き鳥一筋25年、鳥貴族が描く大構想
大倉社長は「付け焼き刃でなく、創業からブレずに均一低価格を続けていることが当社の強み」と話す。
強みの一つは、低い家賃コストだ。他社の場合、駅前一等立地にある従来業態を改装して均一低価格店に転換するケースが多く、その場合家賃は従来業態のまま。鳥貴族は一等立地ではなく、駅から少し離れたビルの地下や2階などに出店するため、売り上げに占める家賃比率は8%と、他の低価格居酒屋に比べ半分の水準だ。店舗の大きさも坪数40、席数70とこちらも他社に比べ半分に抑え、滞在時間2時間弱という高回転率を可能にしている。最初から小型店に出店を絞ることで、タッチパネルを使わず従業員が顧客に直接接客し、顧客満足度を高めやすくなるというメリットも生み出している。
もう一つの強みは、高い食材の品質だ。鳥貴族は創業以来、良質の国産鶏肉に限定して仕入れを行い、店舗で串打ちすることにこだわっている。
鶏肉は牛肉、豚肉より鮮度劣化が早い。大手総合居酒屋が扱う焼き鳥は輸入鶏肉をセントラルキッチン(食材集中加工工場)で加工するケースが多いが、これだと串打ちから店舗で提供するまで1日かかるうえ、保有する在庫も増え、鮮度を保ちにくい。
そのため鳥貴族はあえて「ランチは行わず、夜の営業前に5時間程度かけて、店舗で一本一本串打ちを行っている」(鳥貴族最大手のフランチャイザー、トラオムの堀江新一・代表取締役)。
タレも総合居酒屋のように、メーカー任せにはしない。メーカーに頼むと鶏エキス、タマネギ、ニンジンの粉末、保存料を使用し、うま味が落ちやすいが、鳥貴族は自前で鶏肉と野菜・果物を煮込み自然なうま味があるタレを開発し、国産鶏肉のうま味を生かすことを目指している。