焼き鳥一筋25年、鳥貴族が描く大構想
全品270~300円。目を疑うような安さの居酒屋チェーンが都心繁華街で目につくようになったのは、リーマンショックの翌年、2009年中頃からだ。
先陣を切り、均一低価格に踏み出したのは「東方見聞録」などを手掛ける三光マーケティングフーズ。「白木屋」のモンテローザ、「甘太郎」のコロワイドなども、均一低価格業態の展開に乗り出した。これらの業態は客単価が2000円程度で、従来より1000円ほど安く、懐具合が厳しくなった顧客の支持を集めてブームを巻き起こした。
が、そこに襲った3月の東日本大震災。自粛ムードの蔓延から、従来業態では直後1週間の既存店売り上げが前年比8~9割減。均一低価格業態も売り上げはほぼ半減し、いまだ前年を下回る状況が続いている。
震災前からもブーム終焉の兆しはあった。「和民」のワタミは後発で10年8月「仰天酒場 和っしょい」を開業。セルフサービス方式を採用して人件費を減らす分原価を高く定め、従来の均一低価格居酒屋との差別化を図ったが、店舗は現在2店のみ。17年までに300店体制の構築を狙ったが、「顧客の回転率が想定以上に悪かったため、まずは採算改善を図る。12年3月期は出店予定がない」(桑原豊社長)。他チェーンも、積極的だった均一低価格業態の出店を震災前から凍結し、一部採算の悪い店舗の閉鎖を進め始めていた。
国産鶏肉を店で串打ち 自前のタレにこだわり
そんな中で存在感を増しているのが、焼き鳥専門店の「鳥貴族」だ。他社が震災で大苦戦した3月を含め、6月まで5カ月連続で前年を超える既存店売り上げを見込む好調ぶりだ。創業は1986年。調理師学校卒業後、ホテルマンを経て焼き鳥店の店長を約2年半務めた大倉忠司社長が独立。以来25年間、「鳥貴族」ブランド一本で展開している。