賛否両論・笠原さん「レシピに頼る」人に伝えたい事 顆粒出汁を使ってもいい「もっとラクに」考えて

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和食のベースには、出汁によるうま味があるが、これは日本の食文化独特のものだ。お茶にもうま味成分が含まれている。

うま味は「もう十分にいただきました」「おなかがいっぱいです」ということを脳に教えてくれる役割もある。

母乳がいい例となる。母乳には、昆布出汁並みのグルタミン酸(うま味成分の一種)が含まれている。うま味たっぷりの母乳は赤ちゃんにとって、おいしくてほっとする味なのだろう。でも、いくら赤ちゃんとはいえ、おいしいからといって際限なく母乳を飲むことはない。うま味成分には、脳をそんなふうに制御してくれる作用があるのだ。

ちょっと正反対な例を挙げると、欧米の料理にはこのうま味をきかせたものが少ない。油(脂質)と砂糖(糖質)のインパクトが強い料理が多くあるが、脂質と糖質は大げさに言えば欲望の塊のようなものだから、「もっとほしい」「いくらでも食べられる」という感覚になってしまう。ほどよいところで「満腹感」を教えてくれる和食と対極にあると言える。

白いごはん(=糖質)は悪者?

欧米型の食事が浸透しているとはいえ、日本人に極端な肥満の人が少ないのは、和食のうま味の力に拠る部分が大きいのではないかと思っている。

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だから、和食のうま味は、日本人の健康にひと役もふた役も買っていると言える。そういう食文化があることを、日本人にはもっと気づいてほしいし、誇りに思ってほしい。

余談になるが、最近「糖質制限ダイエット」がたびたび注目を集めている。

「白いごはん(=糖質)は悪者」みたいな論調もあるが、はたして本当に悪なのだろうか。

この論調には、僕はまっこうから「NO!」と言いたい。なぜなら、白いごはんは栄養面でもとても優れているからだ。

ごはん1杯分(約150グラム)に含まれる主な栄養素は次の通りだ。

● たんぱく質=3.8グラム(牛乳グラス半分に相当)
● 脂質=0.5グラム(6枚切り食パン1枚のうち、6分の1に相当)
● 炭水化物=55.7グラム(じゃがいも3個分に相当)
● 亜鉛=0.9ミリグラム(ブロッコリー半分に相当)
● 鉄分=0.2ミリグラム(ほうれん草の葉1〜2枚分に相当)
● カルシウム=5ミリグラム(さんま6分の1尾に相当)
● ビタミンB1=0.03ミリグラム(キャベツの葉1〜2枚分に相当)
● 食物繊維=0.5グラム(セロリ3分の1本分に相当)

このように、ごはんが健康的な生活に欠かせないものであることは一目瞭然だろう。体に必要なものだし、食べることはまったく問題ない。そもそも、糖質は、白いごはん以外の食べ物にもいろいろ入っているのだから、白いごはんが悪いわけではない。

どんなことにも言えるのだが、「すぎたるは及ばざるが如し」。要は、「食べすぎはダメ」ということだ。

笠原 将弘 「賛否両論」店主

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かさはら まさひろ / Masahiro Kasahara

1972年 東京生まれ。高校卒業後、「正月屋吉兆」で9年間修業後、家業の焼鳥店を継ぐ。30周年を機にいったん店を閉め、2004年9月、恵比寿に自身の店「賛否両論」を開店。リーズナブルな価格で、味に定評のある和食料理が人気を博している。テレビ、雑誌などメディアにも多数出演。主な著書に『和食屋がこっそり教えるずるいほどに旨い鶏むねおかず』(主婦の友社)、『笠原将弘のごちそう帖 おうちでカンタン! プロの味』 (毎日新聞出版)、『賛否両論 笠原将弘 保存食大事典』(KADOKAWA)ほか多数。

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