親が悩む「性教育」先進校の事例でヒントを探った 6年間で約60時間のカリキュラムを実施する

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とはいえ、ここまでの充実した授業が受けられる子どもはほんの一握りしかいない。一般家庭の子どもたちへの性教育はどのように考えればよいのか。

特に、親として気になるのは「自分の子どもを性犯罪から守ること」「将来、性犯罪加害者にならないこと」だ。

「性被害を防ぐためだけの性教育は、やってはいけないことを教えることが中心になることが多く、からだを肯定的に捉えることができない。からだのことを科学的に学び、からだっていいな、人と人が触れ合うことっていいな、という感覚を育て、自分のからだが大事だと思える『からだ観』を育むことが大切」と北山さん。

「性犯罪は、顔見知りによるものが多い。頭をなでたり、手なづけたりするグルーミングから始まることもある。だからこそ、自分のからだが大事だという感覚を養うことで、いいタッチ、悪いタッチがわかるようになる。

『なんか変』『なんで今触ってるの?』という感覚を育んでいくことが大切。そのためにも他の人に見られたくない、触られたくないところはプライベートパーツであり、プライベートパーツは自分だけが見たり触ったりしていいところだということを、幼児期から学ぶ必要がある」(北山さん)

「支配する性」の伝え方

両校の性教育カリキュラムは、1年「からだたんけん」、2年「たんじょう」、3年「男らしさ女らしさ」、4年「私たちのからだと成長」、5年「思春期のからだとこころ」、6年「社会的な性の問題」と、まず「生殖の性」について学び、その後「ふれあいの性」を知り、高学年になって「支配する性」について考えていく。

どうしても、性犯罪から子どもを守ろうとすると「脅しの性教育」になりがちだが、人と人が触れ合うことは心地いいことであると理解した上で、支配する性があることを伝えるのが重要だという。

北山ひと美さん/和光小学校・和光幼稚園前校園長。一般社団法人“人間と性”教育研究協議会(性教協)代表幹事、性教協乳幼児の性と性教育サークル代表。幼稚園、小学校の現場で、性教育のカリキュラムづくりと実践を重ねている。共著に『あっ! そうなんだ! 性と生』(2014年、エイデル研究所)、『乳幼児期の性教育ハンドブック』(2021年、かもがわ出版)など。『性ってなんだろう?』(2022年、新日本出版社)監修。NHK Eテレ「アイラブみー」監修(筆者撮影)

「2年生の「たんじょう」で出産、性交・受精を学ぶのは、子ども自身が自分はどこからどうやって生まれてきたのだろう、自分のいのちの素はどうやってできたのだろう、という疑問に対して科学的に学ぶため。小学校低学年ぐらいまでは生まれてきた側として出産も性交・受精も受け止め、「ふれあいの性」も受け止めることができる。

学年が上がり、性交について2年生で学んだことをもう一度確認すると「そうだった」と自然に受け止めることができる。スパイラルに学ぶことで、高学年になり、”性の主体者”として学び直すことができる」(北山さん)

親が生殖の性を伝えるとしたら、小学校低学年頃までがいいそうだ。「初潮や精通を迎えた子どもにストレートに性教育を行うのは難しい。“性の主体者”と感じる子どもは、父親や母親を大人の男性、女性として見ることになる」(北山さん)からだ。

2年生のテーマ「たんじょう」は、「生殖の性」を学ぶ。子どもたちは自分がどのようにして生まれてきたか、いのちの素はどのようにしてできるのかを知りたいと思っており、それに応える授業はとても盛り上がる。この単元では、本人が保護者に聞き取りをし、その内容をクラスで発表する取り組みをしている。

聞き取る内容は、生まれたときの体重、身長や生まれるときの様子、乳児の頃病気やケガをしたかどうか、などあくまでも客観的に答えることができる内容としている。その聞き取りの中で、「逆子」「破水」「へその緒」など妊娠、出産にまつわるキーワードが出てきて、その後の取り立て授業につながっていく。

この学習は非常にデリケートな部分を含んでいるので、保護者に対しては学年教育講座で学習内容の丁寧な説明を行い、各家庭に聞き取りをすることについては、個別の配慮を必要とする場合など慎重に取り組んでいる。
子どもたちの発表と並行して、出産、性交・受精、胎児の成長、いろいろな生まれ方などの取り立て授業を行い、子ども自身が自分の「たんじょう」絵本をつくるというところまで、なんと年間24時間も割かれる。

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