アメリカで横行「EV新興企業詐欺」の愚かな実態 口先だけの新興企業は「ニコラ」だけではない
テスラの成功に触発された投資家たちは近年、カヌー、ローズタウン・モーターズ、ルーシッド・モーターズといった新興企業に資金を注ぎ込んでいた。こうした新興EV企業の支援者や経営陣は、EVをフォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)といった既存の自動車メーカーに挑戦するチャンスと捉え、その過程でリッチになろうとした。
ガソリン車に比べ圧倒的に部品点数の少ないEVは、理論的には製造が容易なはずだった。ところが、自動車を何千台という規模で製造し、ブランドを確立し、安全基準を満たすことは、多くのスタートアップ経営陣やその支援者が予想していたのよりもはるかに難しく、コストがかかることが明らかになった。自動車より訴訟を生み出すほうが得意な企業もあったほどだ。
「SPAC裏口上場」で情報開示を回避
新興EV企業の多くは特別買収目的会社(SPAC)との合併によって株式市場に上場することで、通常の株式公開に伴う情報開示や規制当局の監視の多くを回避した。
こうした企業の株式を購入した投資家は莫大な損失を被った。ニコラはまだ事業を継続しているが、11月に投資家に対して今後1年以内に資金が枯渇する可能性があると警告。株価は2020年以降、99%下落している。
ニコラ株は18日の午後には1株約90セントで取引されたが、2020年6月には65ドル以上で取引されていた。
こうした状況で利益を手にした投資家グループがある。株価が下落することに賭けて利益を得るショートセラー(空売り投資家)だ。株価が過大評価されている実態を暴くことに特化する投資会社は、ニコラなどの新興EV企業を食い物にした。
ニコラに関するミルトンの主張が虚偽であることは、企業不正の暴露を専門とする投資会社ヒンデンブルグ・リサーチによって最初に報告された。