今年はクイーンが出場「紅白」のひと味違った見方 「海外アーティスト出場」の歴史を振り返る

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海外アーティストが大挙出場する流れは翌1991年も続いた。ラトビアのライマ、フィリピンのスモーキー・マウンテン、さらにイギリスからはミュージカル女優で歌手のサラ・ブライトマン、アメリカからは日本のファンにも馴染み深いザ・ベンチャーズ、アンディ・ウィリアムスといったベテランも出場するなど、海外勢が存在感を示した。

とはいえ、それ以降は韓国出身の歌手、「島唄」をTHE BOOMと共演したアルゼンチンのアルフレド・カセーロ、中国の古楽器演奏グループ・女子十二楽坊などの出場例はあるものの、欧米系のアーティストの出場はいったん途絶える。

そのあたりは、やはり日本の風物詩的存在としての『紅白』を求める声や、「テレビ40年」や「戦後50年」といった日本の戦後史の節目にまつわる企画がいくつかあって、海外アーティストの出場は一定しなかったというところだろう。

「特別企画」枠の増加で出演しやすくなった

ただ2000年代に入ると、欧米系だけでなくK-POP(韓流)系のアーティストも台頭してきたことで、海外アーティストが出場する機会が再び増え始める。

まず欧米系アーティストから振り返ると、2008年には、アイルランドの歌手であるエンヤが代表曲「オリノコ・フロウ」と同名ドラマの主題歌「ありふれた奇跡」を披露した。癒し系音楽として日本でも人気の高かったエンヤだが、このときは同年開催の北海道洞爺湖サミットでも議題になった環境問題に関連した特別企画での出演だった。

翌2009年には、これも特別出演でイギリスのスーザン・ボイルが「夢やぶれて-I Dreamed A Dream-」を披露。この年、ボイルはイギリスの人気オーディション番組『ブリテンズ・ゴット・タレント』において抜群の歌唱力で一躍注目を集め、世界的な話題になっていた。

この2つのケースからは、『紅白』の番組構成の変化も見える。昭和時代の『紅白』では通常の歌合戦があくまで基本で、「特別企画」はめったになかった。ところがこの頃になると毎年「特別企画」枠を設けるのが半ば当たり前になり、その枠に海外アーティストがわりとスムーズに収まるようになった。今年のクイーンも同様である。

その後も、東日本大震災が発生した2011年にはレディー・ガガが復興を願うメッセージを込めながら「ユー・アンド・アイ」「ボーン・ディス・ウェイ」の2曲を、2014年「アナ雪」ブームのときにはイディナ・メンゼルが「レット・イット・ゴー」などを披露。

2016年には歌や演奏はなかったものの、ポール・マッカートニーがVTRでサプライズ出演をしてメッセージを送り、2017年には「紅白HALFTIME SHOW」という企画でアメリカのオースティン・マホーンがネタで楽曲を使っていたブルゾンちえみ with Bと共演するなど、特別枠での出演があった。

また興味深いのは、YOSHIKIの存在だ。2010年代後半からYOSHIKIと海外アーティストのスペシャルコラボが立て続けに企画された。

2018年にはサラ・ブライトマン、2019年にはロックバンドのKISS、さらに2020年にはサラ・ブライトマン、クイーンのブライアン・メイ、ロジャー・テイラーと共演。YOSHIKIは海外での活動に積極的なことでも知られている。今後もこうしたケースが出てくるのではないだろうか。

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