定年後「地方に移住した」男性3人懐具合のリアル 住宅は賃貸か、購入か―移住成功者の目線

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現役時代の給与も十分あり、社宅生活で住居費もそれほど大きな負担ではなく、さらに海外赴任時の上乗せ分もあって、それなりに資産は積みあがっていたようですが、それにこのホーム・エクイティが上乗せされました。

そもそもAさんは長崎に移住しても仕事をするつもりだったようです。ただ、移住した時期がコロナ禍の始まった時期で、特に最初のころは状況が不透明すぎて、求人が大幅に減っていたとのこと。そのため、想定とは違ってまったく仕事をしない生活が続きましたが、売却差額もあって腰を落ち着けて職を探すことができました。

ホーム・エクイティという考え方

私は地方都市移住を、退職後の生活における資産寿命の延伸対策の1つと考えています。地方都市移住の効果は生活費の削減、すなわちダウンサイジングに置くことが多いのですが、Aさんのように住宅の持つホーム・エクイティを活用することも大きなメリットになります。資産収入の原資を大きく増やす方法になります。

住宅を1つの資産としてバランスシートを想定します。住宅の時価を資産額として、住宅ローンを負債と考えると、その差額は、会社のバランスシートで言えば自己資本=エクイティとなり、これをホーム・エクイティと呼ぶことがあります。住宅ローンを借りる際に頭金を用意することは、このホーム・エクイティを用意することに他なりません。

頭金が多ければ多いほど、価格の下落で資産額が低下しても、ある程度負債の返済を進めれば、ホーム・エクイティを残すことができます。Aさんのように退職までに住宅ローンを完済すると、売却額がそのままホーム・エクイティになり、次のマンションを購入する際の原資だけでなく、生活費にも充当できることが強みになります。

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野尻 哲史 フィンウェル研究所代表

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のじり・さとし / Satoshi Nojiri

合同会社フィンウェル研究所代表。1959年生まれ。一橋大学商学部卒。山一証券経済研究所(のちに同ニューヨーク事務所駐在)、メリルリンチ証券東京支店調査部(のちにメリルリンチ日本証券調査部副部長)、フィデリティ投信(のちにフィデリティ退職・投資教育研究所所長)を経て、2019年5月、定年を機に合同会社フィンウェル研究所を設立。資産形成を終えた世代向けに資産の取り崩し、地方都市移住、勤労の継続などに特化した啓発活動をスタート。18年9月より金融審議会の各種ワーキング・グループ、タスクフォース委員に就任。行動経済学会、ウェルビーイング学会会員。

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