中国の日本企業への投資が急増、事業運営や人事でトラブル発生の懸念
最近まで中国の青島市政府経済顧問や山東省政府駐日本経済貿易事務所特別代表だった大塚昌弘氏は、かつて中国投資諮詢有限公司(野村證券と中国国際信託投資公司の合弁)副総経理を務めた経験から、「背後に隠れた真の出し手(出資者)がいて、その意向を酌んだファンドから経営方針や人事に対する注文が来れば、日本側は対応しづらいと思います」と注意を喚起する。
中国企業は商務部認可の下に海外投資するが、別名「赤いハゲタカ」とも呼ばれる中国系ファンドのCIC(中国投資有限責任公司)もその1つだ。このCICがアカウント2口座を使って投資したケースのうち、上場日本企業の上位10位以内の大株主になっているものが現在86社もあり(有価証券報告書に記載済み)、総額は1兆5000億円に達しているようだ。新日本製鉄、JFEホールディング、住友金属工業、神戸製鋼所などの大手主要鉄鋼企業もかなり買われている。
中国特殊論に陥るのは間違いのもと
問題は取得株式を名義変更し、事実上の出資者としていつ中国企業の経営者が顔を出してくるかだが、今のところまだその気配は弱い。また、その出資者の意向を受けたファンドが日本企業に事業運営上の厳しい注文を入れているということも少ない。
「顔の見えない投資なので不気味ですが、日本での事業運営に真面目に参画する目的であれば、そんなに無茶なことはできないでしょう」と大塚氏は言う。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所の宮野勉弁護士は、「日本と中国の関係は、日本と欧米の関係と相似形です。“中国は特別だ”とする中国特殊論に陥るのは間違いのもとです。もし、中国企業との間でトラブルが起きそうだったら、これまで欧米企業との間で経験してきた事例を参考にすべきです」と警鐘を鳴らす。