川鍋一朗氏「自動運転は5年後に浸透」と思う理由 自動運転全盛でもタクシー運転手は必要に

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――現場の営業収入が上がっているという声も聞こえてきます。

平均すると1人あたり10%程度上昇しています。一番大きいのは東京などの運賃改定ですが、配車アプリが世間に浸透してきた部分も大きい。乗務員さんの仕事方法にも変化が生まれ、アプリ率が高い乗務員とそうでない乗務員だと、1時間あたり11%もの差が生じています。アプリ市場の伸び率からして、今後もこの傾向は続くと見ています。

――人材確保の意味も含めて、タクシー業界としては強く規制緩和の必要性を訴えています。

これまで50年間近く、2種免許取得の条件が変わっていませんでした。これだけ時代が変化しているのにおかしな話でもあります。私たちが求める規制緩和が実現すれば、タクシーの供給不足の課題は、都市部では1年、観光地では2年、地方・過疎地では3年で解消する見込みです。

――規制緩和は中長期的な人材獲得につながるのでしょうか。

これはもう既にある程度実証できていると思います。1例としては、2022年度の業界全体の新卒採用は1068人を数え、過去最多を記録しました。今求めている地理試験の廃止、2種免許取得のための初任研修の日数短縮などが実現すれば、タクシー業界がこれまで尽力できていなかった女性や外国人乗務員の獲得、さらにパートタイマー的な働き方もより一層可能になります。

つまり、まだ人材を獲得できる余地はある。また今のタクシー業界の離職者、特に新卒の場合は3年で3割程度と決して多くはないですが、1年以内の離職者が占める割合がほとんどなんです。こういった企業側と求職者側のミスマッチを避けるためにも、研修期間の短縮や地理試験の廃止は時代に合わせて行うべきです。

外国人がタクシードライバーとして働けるように

――先進国では、外国人がタクシードライバーになっているケースが多いです。規制緩和の中で、2種免許の多言語対応を求めていますが、その意図は?

海外では外国人のタクシードライバーの割合が多いですが、個人タクシーが主体の海外と日本との違いは、日本の場合は会社文化でタクシーが成熟してきたこと。つまり、日本の法人タクシーの教育制度を活かせればサービス水準においても、外国人の方が働ける土壌はあると見ています。

他産業と同様に、タクシー業界も外国人の方の労働力に頼るべきタイミングは迫っている。そんな中で免許取得の条件が50年以上変わっていない、という現状に危機感があります。すでに各地の教習所や警察との連携を取っており、免許取得の多言語対応は実現する可能性は高い。英語や中国語、スペイン語やポルトガル語など5カ国語程度を想定し、政治的にも2024年秋以降の実施を見越しており、間違いなく進んでいくでしょう。

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