そのうちにジョアナさんが登場。笑顔のすてきな女性だ。テキパキと地下へと先導してくれるのだが、階段を降り始めると頭のすぐわきを車が走り抜ける。目を丸くする筆者に「一般公開前には、車の通行を禁止するわ」と苦笑い。
それにしても、こんなにぎやかな通りの地下にリスボンで最も古い遺跡の1つが残っているなんて、誰が想像するだろうか。
いよいよ2000年前の回廊へ
急な階段を降りると、ライトで照らされた薄暗いトンネルのような通路に出た。これが2000年前に作られた回廊だという。地上から4.5メートルほど潜ったらしい。アーチ型の天井の回廊の高さは一部を除いて3.5メートル程度。幅は約2.3メートルで、大人2人が横並びで歩くには十分な広さで、圧迫感はない。
回廊の全長は約18メートル。並行に通る3本の回廊と、それらと交差する2本の回廊で構成されている。一般公開時には同時に75人ぐらいが3グループに分かれて見学するそうだ。1日に合計約850人がこの場所を訪れる。
薄暗い地下はひんやりしているのかと思いきや、肌寒かった外に比べてかなり蒸し暑い。ジョアンさんは「湿度が高いのは、いつもはこのあたりまで水があるからよ」と地面から1メートルほどを示した。一般公開日の前にだけ、1週間かけて排水するそうだ。
確かに床は濡れていて、あちこちに排水用のゴムホースが這っている。回廊の奥にはかなりの水が溜まっている。雨が入ってくるのかと尋ねると、「壁面の亀裂から常に地下水が流れ込んできているの」と言う。
この亀裂がいつ、どうして入ったのかは不明だが、遺跡として回廊が発見されたときには、すでに浸水していたそうだ。
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