ネガティブな「後悔」の感情が人間に必要な理由 私たちの成長を促す"生産的な後悔"とは

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後悔の感情に関しては、以上の2つの考え方よりも健全な考え方がある。それは「感情は思考のためにある」というものだ。この考え方によれば、私たちは感情から逃げるべきではないが、感情にどっぷりつかるべきでもない。

感情に正面から向き合うべきだとされる。重要なのは、感情を触媒にして将来の行動を変えること。思考が行動のためにあるとすれば、感情はその思考の助けになりうるのだ。

後悔の感情に正面から向き合う

このようなアプローチで後悔の感情に向き合うという発想は、ストレスに関する科学的研究成果に通じるものがある。「ストレス」というと、いかにも悪いもののように聞こえるが、今日の科学によって明らかにされつつあるように、ストレスはあらゆるケースで一様なものではない。ストレスが人にどのような影響を及ぼすか、そしてそもそもストレスとはなにかは、ひとりひとりの思考様式によって変わる。

ストレスを恒久的なもので、人の精神を激しく痛めつけるものと考えるか、それとも一時的なもので、人の能力を高めるものと考えるかによって、影響は異なる。

慢性的にあらゆる局面でストレスを感じることはきわめて有害だが、ときに一時的なストレスを感じることには、好ましい面もある。というより、それは非常に重要なことですらある。

こうした点では、後悔もストレスと似ている。たとえば、自分の人格について後悔すれば、この感情は深刻な悪影響を生みかねない。しかし、特定の局面における特定の行動について後悔するのであれば、その感情を通じて将来の行動を改められるかもしれない。

あなたが家族の誕生日をうっかり忘れていたとしよう。自分が間抜けで冷淡な人間だったことを後悔しても意味はない。家族の誕生日をスケジュール帳に記さなかったことや、日頃から家族に感謝の気持ちを伝えていなかったことを後悔するのであれば、意味がある。

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