森永卓郎×土居丈朗「財政均衡主義」はカルトか 話題の書『ザイム真理教』めぐり論客が誌上討論
森永 すでに日本の社会保障や公的サービスは劣化している。公的年金の所得代替率(現役世代の手取り収入に対する年金給付の比率)は先進国中最低水準だし、公的教育費がGDPに占める比率はOECD諸国内で最低水準だ。これ以上緊縮になってはいけない。
土居 日本の医療保険制度はWHO(世界保健機関)からも手厚いと評され、世界に冠たるものだ。
教育支出が低水準というのは、全人口に占める児童・生徒数の比率が他国より低いからだ。日本では、小中学校は大半が公立で、義務教育は無償。教育への財政支出を渋っているわけではない。
公的年金の所得代替率が低いのは、04年の年金改正でこれ以上社会保険料負担を増やしてほしくないと労使が求め、事実上の賦課方式化したからだ。緊縮財政のせいではない。
もし国民の総意で、所得代替率をもっと上げるべきだということになったら、年金保険料を上げれば実現できるだろう。
国債を日銀に買い取らせればいい
森永 所得代替率の引き上げを増税に頼る必要はない。国債を日銀に買い取らせればいい。
欧州の多くの国で少なくとも公立大学は無償の国が多いのに対し、日本の国立大学の授業料は年間53万円を超えている。人口割合の話だけではない。
土居 高等教育に関しては、20年度から消費税増税財源を用いて、低所得世帯の授業料・入学金の軽減と、給付型奨学金の大幅拡充を行っている。
財源を国債買い入れで賄うのも、結局は教育費負担の軽減をした学生に、将来その返済負担を強いるだけ。将来のある学生に投じる教育費は、低所得世帯に配慮しつつ、高所得の親により多く出してもらう形で、親世代が責任を持って負担するべきだ。
(構成:西澤佑介、黒崎亜弓)
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