森永卓郎×土居丈朗「財政均衡主義」はカルトか 話題の書『ザイム真理教』めぐり論客が誌上討論

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日銀も国債をずっと持ち続けることはできなくなる。物価高対策で、いずれは市中に事実上売らざるをえない。民間が買った国債は、政府が税金で、利子を払ったり、満期が来たら返済したりしなければならない。「日銀が国債を買えば、返済の必要はない」という本書の主張も通用しなくなる。

森永 現在は通貨供給が過大になったことでのインフレではない、コストプッシュ型のインフレだ。

確かに日銀が国債を持ちすぎればインフレになるが、その天井はそうとう高いだろう。民間が保有する国債の元本返済や利払いが負担になるようなら、その国債を日銀が買い取ればよいだけの話だ。

慶応大学経済学部の土居丈朗教授(撮影:ヒダキトモコ)

土居 インフレ期に、日銀が国債を買って通貨供給を増やせば、インフレをあおることにならないか。

日銀が国債を持つ天井はそうとう高いという指摘だが、国債累増との見合いで日銀が買い入れているがゆえに、現在のマネタリーベースは対GDP比で120%、終戦直後の2倍超と歴史的に異常な規模だ。いずれマネタリーベースは対GDP比が安定する水準まで低下させざるをえない。それは通貨量の大幅減か、物価が上昇するかだ。

安定化の必要はない

森永 安定化の必要はない。高インフレにならない範囲で、日銀の国債保有を拡大し続け、そこで生まれる通貨発行益を財源に国民生活を改善させるべきだ。

新たに通貨を発行したら、その額は国の利益となる。その利益を通貨発行益というが、アベノミクスの最大の成果は、年間80兆円程度の通貨発行益を出しても、まったくインフレにはならないと実証したことだ。

土居 いや、通貨発行益とは経済学では、通貨量残高に利子率を乗じた額で、日銀も「有利子の資産(国債など)から発生する利息収入」と定義している。国債利子率がほぼゼロのときは、通貨発行益は10兆円単位とはならない。

森永 通貨発行益を通貨量残高に利子率を乗じた額とするのは、一部の人が通貨発行益を矮小化するため行っている誤った定義だ。

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