キーエンスは「仕組み」ですべての課題を改善する チームのプロセスを数値化してマネジメント

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しかし、前項でチームの「行動の質」が低い場合の原因には「仕組み」の問題が隠れていることがわかりました。すると、実は「仕組み」に問題があったかもしれないという2つの可能性が浮き上がってきます。

まず一つは、トークスクリプトをきちんと習得できていなかったメンバーがいたことから、研修や教育の「仕組み」に問題があったのではないかという可能性です。

スキルの問題の裏に潜む「仕組みの問題」

もしも、研修や教育の「仕組み」に問題があったのだとすれば、これを改善しない限り今後もメンバーが増えたり、変わったりした場合には一定数でトークスクリプトを習得できずに「電話」から「アポ」への転換率を下げてしまうメンバーが出てきてしまう可能性があります。

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そしてもう一つの可能性は、そもそも「トークスクリプト」のマニュアルに、使う側の裁量や技能で解釈が変わってしまうような曖昧さがなかったかという可能性です。これもマニュアルの不備という「仕組み」の問題になります。

既に、チームの「行動の質」の原因を検証する際には、まずはリソースの配分が適切に行われているかを確認し、その次にメンバーのスキルを確認するという優先順位が有効であるとお話ししました。

しかしメンバーのスキルに原因がありそうだと判断した場合は、さらにそのスキルの差が研修や教育、マニュアルなどの「仕組み」に原因があるのではないかと疑ってみる必要があるのです。

これらのリソースの配分やメンバーのスキル、仕組みの不備に関する検証を行えるのは、チーム全体を俯瞰できるマネジャーだけです。

よく「仕組みのキーエンス」と言われます。これは、キーエンスが数値化によって、「仕組み」の改善まで行っていることを示しているためです。つまり、数値化によって明らかになった問題を一時的な改善だけに活用するのではなく、構造上の改善にまで活用しているのです。これこそが、チームの数値化が目指すところです。

岩田 圭弘 アスエネ株式会社 共同創業者 兼 取締役COO

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いわた よしひろ / Yoshihiro Iwata

慶應義塾大学経済学部卒業後、2009年にキーエンスに新卒入社。マイクロスコープ事業部の営業を担当。2010年新人ランキング1位を獲得。その後、2012年下期から3期連続で全社営業ランキング1位を獲得し、マネージャーに就任。その後本社販売促進グループへ異動、営業戦略立案・販売促進業務を担当。2015年、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに転職。小売、医薬、建設業界の戦略策定、新規事業戦略策定に従事。2016年にキーエンスに戻り新規事業の立上げに携わる。2020年アスエネに参画。

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