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経営陣がやりがち「人員補充」が大失敗を招くワケ 遅延プロジェクトに増員すると、さらに遅れる謎

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  • 永井 孝尚 マーケティング戦略コンサルタント
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ブルックスはソフトウェア業界で有名な「ブルックスの法則」として、こう述べている。

「遅れているソフトウェアプロジェクトへの要員追加は、さらにプロジェクトを遅らせるだけだ」

私はさらに悲惨な話をよく耳にする。ソフトウェア開発の現場に、上からこんな話が降りて来るのである。

「経営トップの方針で、システムのサービス開始時期が1カ月前倒しになった。全社方針だから、お金や人員はいくら増やしていい。何とか頑張ってやってくれないか?」

これは料理に10分かかるオムレツを「5分でつくれ」と言うのと同じである。生焼けの出来損ないのオムレツができるだけだ。プロジェクトが失敗する理由の多くがコレだ。ブルックス曰く「選択肢は2つだけ」。言われた通り10分間待つか、5分でつくらせて生焼けのまま食べるかだ。当然、正解は10分間待つことである。

そしてこの「人月」でITシステムを考える発想は、日本のビジネス力全体にさらに深刻な問題を生み出している可能性があるのだ。

「人月商売」が日本の産業界の競争力を削いでいる

日本のIT業界は、長年「人月商売」で儲けてきた。

「顧客のきめ細かい要望に応える」という方針の下で、顧客のITシステムの要件と規模を見積もって、必要な技術者を集めて、システム開発と保守で売上を立ててきた。一時期はこのビジネスモデルはとてもうまく動いていた。

しかしITシステムが順調に稼働をし始めると、つねにコスト削減が求められるようになった。そして顧客企業IT部門の人員削減が始まり、多重下請け構造の中、末端のソフトウェア技術者の人件費も削減されているのが現状である。では、どうすればいいのか。

ブルックスは本書の最終章で、こう述べている。

「創造性が個人から発するものであって工程や組織から発するものではないと考えるなら、ソフトウェアマネジャーが直面する中心的課題は、創造性と独創力を抑えるのではなく伸ばすために組織と工程をどのようにデザインするか、ということになるだろう」

次ページが続きます:
【日本企業がITプロジェクトで抱える課題と「人月商売」】

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