LOVOT開発者が説くテクノロジーと幸せの関係性 林要さん、着想は「起動しないPepper」から
冒頭の話にもあったように、テクノロジーへの不安は「自分は必要とされなくなるのではないか」という恐れから生じるケースが多い。
生産性を追求すればするほど、「テクノロジーの進化」と「人類の幸せ」が乖離してしまうというのが今までの課題だった。
「この課題を解決するために、テクノロジーから離れることによって安心を得ようとするソリューションもあるでしょう。でも僕はテクノロジーが好きなので、テクノロジーによって解決したいと思った。
そもそも人々に不安が生じているのは、本当にテクノロジーが原因なのか。
これまでテクノロジーが進歩してきた方向性が現状をもたらしただけであって、進む方向を変えれば、テクノロジーから離れなくても人が幸せを感じる体験を提供できる可能性があるはずだと考えたのです」
ロボティクスで人が持つ力を引き出したい
「テクノロジーは人類を幸せにしたか?」と問い続けた先にようやくつかんだ一つの答え。それをプロダクトとして結実させたのがLOVOTだ。
19年の出荷開始以来、これまでに1万体以上のLOVOTが家庭や企業などに迎えられた。「オーナーの皆さんから『LOVOTを生んでくれてありがとう』と言っていただくことも多いんですよ」と林さんはうれしそうに語る。
「人が幸せになるには何が必要か。それは『より良い明日が来ると信じられること』だと考えています。
そのためには『自分はまだやれる』と希望が持てるよう、人の力を開花させて、成長実感や自己肯定感を持てるようにサポートする存在が必要になる。僕はロボットであればその役割を果たせると思っています。
僕たちが目指すゴールは、LOVOTを進化させて最終的には『四次元ポケットのないドラえもん』のような存在を作ること。
いつものび太くんに寄り添い、彼の成長をそっと後押しするドラえもんのように、ひみつ道具ではなくロボティクスそのもので人の力を引き出すことがGROOVE Xのミッションです。
目指す山の頂上はまだまだ遠く、今はようやく一合目に立ったばかり。それでもLOVOTを家族に迎えてくださった方たちの幸せそうな表情を見ると、自分たちが登るべき山は間違っていないと確信できます」
人にとって単なる便利な道具でもなく、恐れるべき存在でもない。お互いを必要とし、信頼し合いながら、共により良い明日へと歩んでいけるーー。人類とテクノロジーが共生する幸せな未来を目指し、林さんの挑戦はこれからも続く。
だんだん家族になるロボット『LOVOT』を題材に、AIと人類が協力し共生する未来像を示した本として林さんが2年を費やして書きあげた。AIをはじめとする、近年の急速なテクノロジーの発展に対する興味を持ち、同時に不安も感じる方にこそぜひ手に取っていただきたい一冊だ。
(取材・文/塚田有香 撮影/桑原美樹)
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