LOVOT開発者が説くテクノロジーと幸せの関係性 林要さん、着想は「起動しないPepper」から

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このまったく新しいロボットのコンセプトは、林さんが「テクノロジーは人類を幸せにしたか?」という問いを突き詰めた先に生み出された。

「テクノロジーが絶えず進化してきた本来の理由は、人を幸せにするためでした。資本主義の枠組みの中で『生産性』や『利便性』などの指標が重視され、それを向上させるためにテクノロジーは発展してきたのです。

しかし最近では『人間はAIに仕事を奪われ、自分は必要とされなくなるのではないか』と考える人が増えています。むしろテクノロジーが人を不安にさせる傾向が強まっているのです」

(写真:桑原美樹)

テクノロジーによって仕事でも家庭でもさまざまな作業が効率化され、人々は便利で豊かな生活を手に入れた。だが「それであなたは幸せになりましたか?」と問われると、答えに詰まってしまう。そんな人は多いはずだ。

愛されるテクノロジーの条件とは何なのか

林さんが「テクノロジー」と「人の幸せ」の関係について意識する原点となったのは、まだ社会に出る前の少年時代の体験にさかのぼる。

「僕は子どもの頃から宮崎 駿監督のアニメが好きで、作中に登場する一人乗り飛行機に憧れて同じものを自分で造ろうとしたことがあるほど、乗り物というテクノロジーに強い興味がありました。

高校生になると今度はバイクに乗りたくて免許を取得しましたが、母は不安そうな表情を見せていたことを覚えています。

父はエンジニアなのでテクノロジーに理解がありました。その一方で、母のようにテクノロジーに一抹の不安を覚える人もいる。 

テクノロジーに対して異なる見方をする両親の間で育ったことで、僕自身も『テクノロジーは必ずしも全ての人を幸せにしないのかもしれない』という疑問を持ちながら育ったように思います」

それでも林さんの乗り物好きは変わらず、大学院を修了するとエンジニアとしてトヨタ自動車に入社。スーパーカー『LFA』の開発やF1のエンジニアリング、量産車の製品企画などに携わる機会を得た。

「どの仕事にもこれ以上ないくらい真剣に取り組んだ」と振り返る林さん。だが、いわゆる自家用車の開発に携わる中で、ある矛盾に気付いたという。

(写真:桑原美樹)
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