ヴェルサイユ宮殿が「悪臭」に包まれた驚きの経緯 身近な「水」をとおして世界を見渡してみる
中世ヨーロッパでは、女性もどこでも用が足せるように裾の広がったスカートを穿くようになりました。
ところが道路は汚物でぬかるみになっています。かかとの低い靴では、ドレスの裾に汚物がついてしまいます。それを避けるため、女性は高い靴、つまりハイヒールを履くようになりました。
しかし、今のようなかかとだけが高いハイヒールではありません。つま先もかかとも両方高くないとダメなわけです。
また、建物の2階3階の窓から、便器に溜めた排泄物を道路に投げてしまう人々が多かったので、道路の端っこを歩くと汚物がかかってしまいます。
そのため、男性は女性が道の真ん中を歩くようにリードするようになりました。
こうして、紳士は淑女が道の真ん中を歩くようにエスコートする習慣ができ、上からの汚物がかかっても中の衣服が汚れないように、マントを着たという時代がありました。
コレラの原因を見抜いた! 天才医師のすごい仮説
しかし、悪い衛生状況は変わっていきます。それは伝染病が蔓延し、人々が多数亡くなっていったからです。
「水系感染症」といわれる病気があります。病原微生物(細菌類、ウイルス類、原生動物類)に汚染された水を介して感染する感染症です。
その1つがコレラです。昔からパンデミックを起こしています。
コレラは、感染者の便で汚染された水や食べ物を口から取ることによって感染し、激しい下痢や嘔吐を引き起こす、死亡率が高い病気でした。
なお、現在流行しているコレラは、19世紀以前に流行し、たくさんの死者を出したコレラとは別の型で、死亡率も2%程度です。
原因のコレラ菌は、コッホという微生物学者が発見しますが、それよりも前の1855年、まだコレラの原因がわかっていなかった時代に、前年の調査結果を取り入れた論文を発表し、水が原因だということを見抜いたジョン・スノウという医師がいました。
スノウの業績は、衛生化学という学問分野の事はじめになるのではないかといわれています。
衛生化学とは、ヒトの健康な生活の確保と病気の予防のため、食品や環境中のあらゆる物質とヒトとの関わりを探究する学問分野です。
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