「学力差の要因は遺伝が50%」教育格差の解決策 無料塾は教育格差にどう立ち向かうべきか?<前編>

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

安藤:自分でもやろうかと思うくらい、もともと興味がありました。支援もしています。

おおた:いわゆる「教育格差」を少しでもなくしていくための素晴らしい活動に共感する一方で、いろんな矛盾にも気づいちゃうわけです。塾に通えない子どもが競争の土俵にも上がれない社会って設計としてどうなのよ、とか、そもそもなんで教育で競争しなくちゃいけないんだっけ、とか。

安藤:その視点が素晴らしいなと思いました。

「生まれ」の影響を打ち消せば、教育格差はなくなるか

おおた:親の社会経済的地位(SES)や出身地、性別などの「生まれ」によって、学力や最終学歴に差がつく傾向のことを教育格差といいます。結果的に学力差がつくことが問題なのではなくて、本人にはいかんともしがたい「生まれ」と学力・学歴が相関していることがフェアではないという問題提起が、主に教育社会学の分野からされてきました。

いわゆる「親ガチャ」ですね。そこでいきなりですが、核心に迫る質問をしたいと思います。教育社会学的な意味でいう「生まれ」の影響を打ち消せれば、教育格差はなくなるのでしょうか。

安藤:行動遺伝学の立場から見れば、子どもの学力に対する影響力は、遺伝が約50%、家庭環境(親の社会経済的地位など)が約30%、残り(いい先生と出会う偶然や本人が変えられる要素)が約20%です(図)。親の社会経済的地位に由来するように見える影響のうち半分くらいが、実は遺伝的要因の反映(環境と遺伝の受動的相関)だとわかってきています。

おおた:とすると、いくら家庭環境や教育環境の差を埋めても、遺伝による差が残ってしまう。

安藤:その通りです。教育社会学会にも参加して、私はそう主張しましたが、あんまり反応はよくありませんでした。理論的にそうなるだけではなく、実証もされています。アメリカに比べて、日本社会における学力の遺伝率は若干ですが高く出ます。アメリカよりも均質な教育が行われているので、遺伝の差が出やすいのです。

おおた:みんなが同じ条件で教育を受けられる社会で結果の差ができたとしたら、それは努力の差ではないかと思われがちですが、実は遺伝の差だったということになりかねない。それこそ本人にはいかんともしがたい。

安藤:もちろん社会経済的地位の影響も一定程度はあるので、そこを埋める努力を社会として続けることは大事です。特に1点2点を争う受験競争においては、この違いが合否を分ける可能性がある。無料塾の役割はまずはそこにあるのだと思います。

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事