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「学力差の要因は遺伝が50%」教育格差の解決策 無料塾は教育格差にどう立ち向かうべきか?<前編>

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安藤:僕はおおたさんのその視点に共感するんです。

おおた:だって、かけっこが遅い子をつかまえてひとの何倍も走らせたりしないじゃないですか。絵が苦手な子に、ちゃんと描けるようになるまで帰さないとかやらないじゃないですか。でも、勉強に関してはそこまでやることが正義であるかのようについ思ってしまう。

足が遅くても絵が下手でも社会に出て困らないけれど、勉強ができないと社会に出てから困ると、多くのひとが思っているからですよね。

安藤寿康さん(写真:露木聡子)

安藤:ジェネラルな学力が何らかの能力を測っていることは確かだけれども、それが社会に実装されたとき本当に意味のある能力なのかといったらそうでもないということはみんなわかっているのに、一方で、学力やその結果得られる最終学歴によって社会に出てからの地位や収入が違ってしまう構造を、受け入れてしまっている。

行動遺伝学の知見から導かれる論理的答え

おおた:たまたま知能や学力に関して有利な遺伝的特性をもったひとたちが圧倒的に有利な社会構造になっている。

安藤:料理でもスポーツでも芸術でも建築技術でも介護でも、人類はさまざまな文化的知識を生み出してきました。これらを学んで身につけたものを広く<学力>というのなら、いろいろなところにニッチ(ほかのひとがいないすき間)ができて、それぞれのもって生まれた遺伝的特性にマッチする学びや仕事が必ずみつかるはずです。

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教育の成果というものをそういうふうに広くとらえ直していくしか、格差の連鎖の構造を変える方法はありません。行動遺伝学をふまえれば、論理的な答えはそれしかない。

おおた:私たちはできるだけ学力差が小さくなる世の中を望んでいると言っていながら、一方で、世の中のほとんどのテストは、結果が正規分布するように考えてつくられているわけです。差がないと困るから、わざと差をつくり出しています。

どんなに学力差が縮まったとしても、偏差値をはじき出せば、上から下までくっきりと差がつけられます。

安藤:教育成果のとらえ方を変えない限りその矛盾から抜け出せません。遺伝的な理由による<学力>の違い自体が遺伝的に適応的な学習の成果だととらえ、要するに「差があって当然。むしろ違いがあることこそ望ましい」という学習観を確立すべきだと考えます。

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