「タマネギ切ると目に沁みる」意外と複雑な仕組み イグノーベル賞を受賞したおもしろすぎる研究

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この研究は、ハウス食品でレトルトカレーの製造中に発生した謎の現象がきっかけで生まれた。

レトルトカレーの製造では、タマネギとニンニクを混ぜて炒める工程がある。普通はよく炒めると美味しそうなキツネ色に仕上がるところ、ある時、不思議なことに青々とした色になってしまったことがあった。この時は残念ながら、何百キロものタマネギとニンニクを捨てざるを得なかったそうだ。

今井博士が研究について振り返る

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この現象が起きた理由を探り再発を防ぐために、タマネギの研究を始めた。今井博士は当時をこう振り返る。

「始めた頃は、まだ遺伝子に関する研究をしたことがなかったので、実験の手引書(初級編)を頼りに手探りで行ったことを今でも覚えています。また、たくさんのタマネギを切って実験していたので、作業着がタマネギ臭くなってしまい洗っても落ちなくなりました。特に、洗濯後にアイロンをかけると部屋中がタマネギ臭で充満するため、家庭では不評というより、ちゃんと仕事しているのかと心配されました」

研究打ち切りの危機も乗り越えてやっとの思いでまとめた研究成果は、著名な学術誌の『Nature』に掲載された。イグノーベル賞の授賞式で今井博士は、タマネギによって泣かされたすべての人、そして人間に食べられた全てのタマネギにも感謝の意を伝えた。

五十嵐 杏南 サイエンスライター

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いからし あんな / Anna Ikarashi

1991 年愛知県生まれ。カナダのトロント大学で進化生態学・心理学を専攻(学士)。休学中に半年間在籍した沖縄科学技術大学院大学で執筆活動をはじめる。同大学卒業後、イギリスのインペリアルカレッジロンドンに進学。科学の専門家と非専門家をつなぐことを目的とした学問「サイエンスコミュニケーション」の修士号を取得。同カレッジ在学中に、NHK CosmomediaEurope やBBC でリサーチャーを務める。日本帰国後は京都大学の広報官を務め、2016年11 月からフリーに。2019 年9 月、一般社団法人知識流動システム研究所フェロー就任。

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