日本で「SF(Science Fiction)の研究」といえば、「科学的な虚構」に対する科学的な研究を指す。評者が専門とするのもそれだ。一方、本書のScience Fictionsは「虚構の科学」である。科学に虚構が交ざるのは極めて有害だが、残念ながら近年、そうした問題が実際に起きている。本書は、現在の科学における危機、「再現性の危機」についてまとめた本である。
華やかな成果を求めて誇張が加速
科学が科学たりえるにはいくつかの要素が必要となる。例えば、与えられた問題を実証可能かという「実証性」、客観的な事実によって結果を記載できる「客観性」に加え、同一条件の下で誰もが結果を検証できる「再現性」も重要な要素だ。日々の研究は、これらを前提に行われているが、現在、著名な論文の半数以上で「再現」が実施されない。それは、研究者が行う統計評価に問題があるためだ。
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