「タマネギ切ると目に沁みる」意外と複雑な仕組み イグノーベル賞を受賞したおもしろすぎる研究

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ニンニクやタマネギが持っている防御機能の一つが「アリイナーゼ」という酵素。動物に噛みちぎられたりして細胞がダメージを受けると、刺激性の物質を作り出す働きがある。

ハウス食品による研究が行われるまでは、タマネギに含まれる「PRENCSO」という化合物が時とともにこのアリイナーゼによって催涙成分に変化すると思われていた。

ところがこのPRENCSOを、タマネギ由来のアリイナーゼ溶液に混ぜると催涙成分ができたのに対し、ほぼ同じ成分のはずのニンニク由来アリイナーゼ溶液ではなぜかできなかった。ならばきっと、タマネギ由来のアリイナーゼ溶液には、ニンニク由来アリイナーゼにはない何かがあるのだろうと、研究チームは考えた。

そこで、タマネギ由来のアリイナーゼ溶液から見つかったのが「催涙成分合成酵素」だ。PRENCSOはアリイナーゼによって、一瞬だけ「プロペニルスルフェン酸」という物質に変化する。新しく見つかった催涙成分合成酵素が、そこからさらに、このプロペニルスルフェン酸を催涙成分へと変化させていることがわかった。

現在、この催涙成分合成酵素は、ネギ、ラッキョウ、リーキ、シャロット、エレファントガーリックなど、切った時に「うるっ」とくるネギ属植物でも見つかっている。 この2つの酵素の働きを抑えられれば、目に沁みないタマネギが作れるわけだ。

ハウス食品は涙が出ないタマネギを開発

実際、ハウス食品はこの研究を応用し、涙が出ないタマネギを開発、2015年に発表した。重イオンビームを照射し突然変異を起こさせ、酵素の働きがはるかに弱いタマネギを作り出した。催涙成分が出ないだけでなく、辛みもほとんどないそう。10年がかりで開発したこのタマネギ、水にさらす必要もなく、目にも沁みず、匂いも手につきにくいため、より手際よく調理できるということだ。

ちなみに、普通のタマネギを切る時になるべく目に沁みないようにするには、3通りの方法がある。
(1)切る前によく冷やして、酵素反応を抑える
(2)良い包丁で切って、なるべくタマネギの細胞を壊さないようにする
(3)目に沁みる前にさっさと切ってしまう

要するに、手間を惜しまず、道具に投資して、料理上手になれ、ということだ。

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