営利と非営利をはっきり2つに分けられない理由 「国家や株式会社」がどうしてもできないこと

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青木:そうですね、「国家や株式会社がしないこと」っていうのは重要なポイントですね。だから非営利セクターは市場を独占したいとかそういう話ではない。そもそも市場の有無ではなく、課題があるからそれを解決するためにどうにかしてやるっていうことなんでしょうか。

競争ではなく共創の論理で動いている

今井:そうなんです。うちのNPOの話だと、ユキサキチャットみたいなサービスを広範囲で国がちゃんとやってくれるんだったら手を引いてもいいかなって思っています。それは別の課題解決が足りていないことに動こうっていう発想なんです。

ソファーに座る男性2人
青木真兵氏(左)と今井紀明氏(右)が語り合った(写真:認定NPO法人D×P)

あと、そもそも僕は、非営利セクターが市場を独占することはあり得ないと思っています。団体同士で協働するとかノウハウをシェアするとか、できる限り共創的につくっていくことをしないと、本当の意味で課題は解決できません。子どもの支援分野だと、1団体でできることはどうしても限られていますので。競争じゃなくて共創なんです。そこが非営利セクターが株式会社とは違う論理で動いているところだと思います。

とはいえ、全部一概に言えるわけじゃないし、そこにはグラデーションがあるんです。非営利活動のなかでもさまざまなジャンルや活動があってビジネス化しやすいものもありますが、やっぱり国家や株式会社がどうしてもできないこと、しないことをリスクをとって行っていくということが非営利活動なのだと、僕は強く思います。国境なき医師団とか、それ以外にもさまざまな非営利組織が、寄付を集めて活動しています。

僕たちも国や株式会社に直接干渉されずに自分たちでお金を集めて運用させてもらって、それを仕組み化して子どもたちのセーフティネットをつくっていくことは、改めてブレずにやっていきたいと本書を読みながら思いました。

青木:本書には国家とか株式会社がしてきたことが書かれていますけど、むしろここに書かれていないことをしていくのが非営利セクターなのかもしれませんよね。

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