営利と非営利をはっきり2つに分けられない理由 「国家や株式会社」がどうしてもできないこと

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青木:もう一つ、あまり本書には直接言及されていませんが、やはり株式会社の発展の背景にはテクノロジーの発展があります。

産業革命の初期は水力とか蒸気機関によって機械は動いていたわけですけど、20世紀初頭になってくると工場が電化されてきたり、動力源として石油が登場してきます。どんどんテクノロジーも発展し、例えば相対性理論が出てきて原爆が開発されるようになります。20世紀以降のテクノロジーの進展が速すぎて人間がついていけなくなってしまった。この点も欲望が人間を超えてしまった原因だと思っています。

このように、もう誰も欲しがっていないのに利益を上げ続けるシステムがすごいスピードで回り続けている背景には、テクノロジーの発展があると思っています。

ここもD×Pの視点から読み替えると、ユキサキチャット(D×Pが運営するLINE相談事業)はそのテクノロジーを使って、どうしても世帯や家族が最小単位として考えられてしまう日本社会において個人への支援を届けることができています。これはテクノロジーの正の側面だと思います。とはいえ地球全体で見ると、本来は一民間企業であるGAFAが国民国家を超えたインフラになってしまっている状況は問題です。

非営利の起源

今井:まさにその通りですね。その巨大なインフラとは比較にもならないですが、約10年前にD×Pを設立してから、子どもたちのセーフティネットをオンラインで作ってきてユキサキチャットの登録者は1万2000人を超えてきました。

今井紀明(いまい のりあき)/認定NPO法人D×P(ディーピー)理事長。1985年札幌生まれ。立命館アジア太平洋大学(APU)卒。高校生のとき、イラクの子どもたちのために医療支援NGOを設立し、紛争地域だったイラクへ渡航。その際、現地の武装勢力に人質として拘束され、帰国後「自己責任」の言葉のもと日本社会から大きなバッシングを受ける。対人恐怖症になるも友人らに支えられ復帰。偶然、中退・不登校を経験した10代と出会い、自身のバッシングされた経験が重なり、2012年にNPO法人D×Pを設立。経済困窮、家庭事情などで孤立しやすい10代が頼れる先をつくるべく、登録者1万2000名を超えるLINE相談「ユキサキチャット」で全国から相談に応じている(写真:認定NPO法人D×P)

食料支援は累計で17万食、給付金は6000万を超えるようになってきて、自分たちとしては国とか株式会社ができないことをやってきたという自負があります。民間から独自で寄付を集めて、こどもたちをサポートする仕組みをつくっています。昨年だと約1.9億の予算のうち91%を寄付で支えてもらっています。

こういう活動をしてきたなかで、「非営利の起源」とは何かを考えないといけないと思いました。たぶん非営利の起源って民主主義と関係があると思っているのですが、本書を読んだことでそのあたりの解像度を上げていきたいと強く思いましたね。

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