「中国の肺炎拡大」免疫低下以外に懸念される要因 見落とされている「別の問題」を医師が指摘
実際、アメリカでも、2022年11月のインフルエンザによる入院患者数が2010年以来の最多を記録した。感染症の増加は、パンデミック対策の緩和後に見られる一般的な現象といえるだろう。
中国の状況が、ほかの多くの国が経験したインフルエンザやRSウイルスによる病気の増加とは異なっているのは、マイコプラズマ肺炎が主流であるという点だ。
マイコプラズマは細胞壁を持たない特殊な病原体で、細胞壁を壊すペニシリンなどの抗菌薬は効果がない。このため、一般的にこの感染症の治療には、細胞の中のタンパク質の合成を阻害するマクロライド系抗菌薬などを使っていく。
通常使われている薬の効果がなくなっている
しかし昨今、抗菌薬の過剰使用により、病原菌のマイコプラズマに薬剤耐性(薬が効きにくくなること)を獲得していることが指摘されている。
つまり、通常使われている薬の効果がなくなっているのだ。実は、北京での薬剤耐性率は70〜90%に達していて、この耐性が治療の妨げとなり、回復を遅らせていると考えられる。
薬剤耐性菌の広がりが、中国の子どものマイコプラズマ肺炎感染による高い入院率につながっているのだ。
事実、中国では医療関係だけでなく、畜産関係などでも抗菌薬の過剰使用が問題となっており、環境中に抗菌薬が流出し、知らないうちに抗菌薬を子どもたちが摂取していることが報告されている。
11月末現在、WHOは中国の感染症拡大について、この時期にしては病気の発生率が異常に高いものの、冬に呼吸器疾患が増えるのは珍しくないとする前述の声明を出した。基本的な予防措置として、特段目新しさのないマスクの着用、病気の際の自宅療養、手洗いの徹底などを勧めている。また、中国への旅行制限を設ける必要はないとしている。
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