「中国の肺炎拡大」免疫低下以外に懸念される要因 見落とされている「別の問題」を医師が指摘
筆者は中国の研究者らと30年以上にわたり交流を続けており、2023年5月には4年ぶりに南部の上海に渡航した。そしてついこの間、公衆衛生の研究者らを東京でのシンポジウムに招いたばかりだが、北部で流行するこの肺炎については、特に話題にはならなかった。
なぜ肺炎が中国で流行しているのか。
真っ先に考えられる理由は、2019年末にパンデミックが始まって以降、中国は初めて新型コロナの制限措置がない本格的な冬を迎えていることだ。
すでに新型コロナの制限措置を緩和していた中国以外の国でも、緩和後にはインフルエンザやRSウイルスが増加している。これと同じことが中国で起こっているのだ。
マイコプラズマ肺炎は一般的な呼吸器疾患の1つ
中国の保健当局によると、10月以降に入院患者数が増加している原因は、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルスなど、すでによく知られている一般的な病原体によるものだという。
そもそも冬にインフルエンザなど呼吸疾患が多いのは普通のことで、内科や小児科の外来は、特に冬場に混み合う。筆者が勤める医療機関も同様で、朝から夜まで風邪症状の患者の治療にひっきりなしに当たっている。
北京などの北部都市ではマイコプラズマ肺炎による入院が増えているものの、中国当局はこれまでのところ、肺炎の増加はこれらのすでに知られた病原体が原因であるとしており、「新型病原体は確認されていない」としている。
マイコプラズマ肺炎は、昔からよく知られている一般的な呼吸器疾患の1つで、耳にしたことのある方も多いだろう。マイコプラズマ・ニューモニエという病原体によって起こる。
肺炎というと酸素を吸入して、人工呼吸器につながれるような重症コロナ肺炎を思い浮かべるかもしれないが、マイコプラズマ肺炎は通常は軽症ですむ「歩ける肺炎」ともいわれる病気だ。
感染しても、風邪に似た軽度の症状を引き起こす程度。咳が長引くこともあるが、大多数の人は自分の免疫力でも回復するし、通常は酸素吸入も入院も必要なく、多少症状が強くても、飲み薬を服用しながら家で療養するだけで治ることも少なくない。
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