焼き肉店の食中毒事故はなぜ頻発するのか? 業界、行政の早急な意識変革が必要

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 焼き肉業界全体として、制度上出回ってないはずの生食用牛肉を、加工用牛肉で代替して使っているという慣習が消費者に広く知れ渡った以上、生肉に対する不安を払拭することは容易ではない。全国で400店弱の焼き肉店が加盟する事業協同組合・全国焼肉協会は、「これまでばれてこなかったことだが、今回を機に安全性のアピールを考えなければならない」と話す。裏を返せば、これまで飲食店側が制度の不備に甘えてきた面も否めない。

東京都福祉保険局が6月7日に発表した「生食用食肉を取り扱う施設に対する緊急監視結果について」(5月6日から31日まで、特別区・八王子市・町田市と連携して緊急実施)では、生食用食肉(牛肉・馬肉)を取り扱っている842店のうち、厚労省の衛生基準通知に適合していない店が78.5%を占めるというずさんな実態が判明した。

「牛角」のケースでは、焼き肉店では例え生食用でなくても食中毒事故が起きる、ということを顕在化させた。食べる際にどのようなことに気をつける必要があるかという点も含め、まずは業界全体で意識改革を行うことが必要だ。

形骸化してきた制度を維持してきた厚労省も、実態を踏まえた制度改正を行うことが必要となる。環境と食の安全について啓発活動を行う一般社団法人・全国消費者協会の戸口つとむ事務局長は、「生食用牛肉を出荷できると畜場が存在しないということ自体がおかしい。店舗で肉の表面を削る作業も必要だが、責任を店側に押しつけるのではなく、生食用の牛肉を流通させる仕組みを行政は早急に構築すべきだ」と主張する。

衛生基準の厳格化を見送ってきた厚労省は、食品衛生法に基づく罰則規定のある生食用食肉の規格基準を、9月末までに新設することを表明している。「今後は生食用牛肉以外の食品でも、先例主義に縛られず、予測してリスクを押さえ込む判断が必要となる」(戸口事務局長)だろう。

消費者が安心して美味しい肉を食べるという環境を一刻も早く取り戻すために、事業者だけでなく、監督者の立場にも改めるべき点は多い。
(二階堂 遼馬 =東洋経済オンライン)

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