2023年に噴出した「芸能界の闇」今後起こりうる事 旧ジャニーズ、宝塚、歌舞伎界と続いた不祥事

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ジャニー喜多川氏の性加害問題をきっかけに、問題を起こした企業に対する取引先の責任が問われることになった。とくに、これまでは「特殊な業界」として免罪されがちだった、エンターテインメント業界も、例外とはならないということが明確になっている。

そうした中、元ネスレ日本社長の高岡浩三氏の発言が注目を集めた。高岡氏は、以前からジャニー喜多川氏の性加害を噂として知っており、そのためにジャニーズタレントを広告に起用しなかったことを表明。さらに、この問題を黙認してきた、メディアや広告業界、さらにはほかの企業に対しても批判の目を向けた。この発言は共感を呼び、同氏は「違いが分かる男」として、賞賛を集めるに至った。

高岡氏社長時代のネスレ日本の基準で、企業が広告契約を行うことができれば理想であるには違いない。

芸能界と企業の建設的な向き合い方

しかしながら、芸能界には「噂レベル」の話はいくらでも存在する。しかもその多くは、報道レベルでは真偽を判断することが難しい。事実確認できていない段階で取引を停止することが妥当かどうか──という問題もある。

宝塚歌劇団の現役団員は旧ジャニーズタレントほど、テレビや広告への起用はない。しかしながら、今回は先輩から後輩への理不尽なハラスメントが恒常的に続いていたことが問題視されていることを考えると、元団員の現役女優の起用に際して、過去の行動も問われていく可能性もある。さらに追及すると、阪急電鉄や阪急阪神HDの取引をどうするのか──という問題も出てくる。

歌劇団側は第三者委員会の設置を検討しているという報道が複数出ている。阪急電鉄、阪急阪神HDは、歌劇団が第三者委員会を設置して、中立的かつ客観的な調査を行うことを指導すべきであるし、それが十分になされない限り、両者の評判や取引にも悪影響を及ぼすことになるだろう。

以前に書いた記事(日本企業「ジャニーズからの撤退」に感じる違和感」)でも述べたが、不祥事を起こした企業と取引を停止するという判断は必ずしも賢明とは言えない。取引を続けることで、相手側に改善を求めていくという方法もあるし、現在の芸能界に対してはそうした向き合い方をするほうが建設的であると筆者は考えている。

旧ジャニーズ事務所との取引停止を表明し、同社を批判したサントリーHDの新浪剛史社長は、賛同も集めた一方で、過去の同氏の素行に対して批判も受けることとなった。他社にコンプライスを求めるからには、自社はそれ以上にコンプラインスを徹底する必要がある。

「他人は自分を映す鏡」と言われるが、他社の不祥事に対して、自社も学んで襟を正していくことも求められる。

窮屈な時代になったことを嘆く人たちも多いが、もはや過去に戻ることはできない。ノスタルジーにとらわれることなく、問題の要因を解明し、改善し、新しい仕組みを作り直すことで、未来へと歩むほかはない。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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