アラブが「日本に中東和平の調停役」期待する理由 混迷するイスラエル・ハマス戦争の行方は?

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9・11アメリカ同時多発テロが起きたとき、ビンラディンがテロ実行の開始に使ったコード・ネームは「グラナダの悲劇を繰り返すな」だった。その意味は8世紀から800年間、イベリア半島を支配したイスラム勢力がキリスト教の勢力による虐殺にあい、半島を追い出された最後の地がグラナダだったからだ。現在、ユダヤ教、キリスト教を含む西洋文明とイスラム文明の対立の構図は、歴史の呪縛からのものだ。

日本の多くの中東専門家は日本の調停役としての役割に否定的だ。ただ筆者の取材経験から、時代が根底から大きく変わりつつあることを踏まえ、アラブ諸国の日本への期待も含め、熟考のうえ、アクションを起こすべきと考えている。

日本の国際的発言力の強化は課題

東西冷戦が終結した1990年代、筆者はヨーロッパの政治家、財界人、学者などの知識人に連続でインタビューした。そのとき、ほぼ全員から「日本は冷戦後の新たな世界のフレームワーク作りでイデオロギーにこだわらない主要プレーヤーになってほしい」と言われた。

だが、当時の日本にそんな空気はなく、バブル崩壊で失意の中、内向き状態が続き、目まぐるしく首相交代が続いていた。

何をやっても支持率が上がらない岸田政権の迷走が今も続いているが、世界情勢は冷戦終結当時同様、ウクライナ危機で大きく様変わりしている。SNSの時代、今回のイスラエルでの戦争でパレスチナへの支持、ユダヤ人への憎悪が特に若者の間で恐ろしい勢いで拡散し、戦争に影響を与えている。アメリカはますます存在感を失い、大国より新興国や途上国の発言力が増している。

国際通貨基金(IMF)の予測では、日本の名目GDPは2023年にドイツに抜かれ4位に転落する見通し。この流れが続けば、日本の存在感は弱まる一方だ。経済一流、政治三流と言われた日本は経済一流の評価も陰りが出ており、国際的発言力の強化は必須の課題だ。

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