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アラブが「日本に中東和平の調停役」期待する理由 混迷するイスラエル・ハマス戦争の行方は?

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  • 安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)
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ハマスはもともとガザ地区で苦しむ住民への人道援助から出発した。アメリカのウォールストリートジャーナルは、なぜ、ガザの住民はイスラエル軍による大量虐殺の原因を作ったハマスに文句をいわないのかと疑問を呈している。ただ、キリスト教より明確な死後の世界を示すイスラム教では、異教徒によって殺害されたムスリムが高く引き上げられることを信じる信者は少なくない。

さらにハマスの巧妙な世論操作とイスラエルに虐げられるパレスチナ人の強い敵愾心がある。それはイスラエル政府が築いた高い壁で「天井のない監獄」といわれるガザ地区の中で醸成された。フランス在住の友人の50代のムスリム男性は「この戦争でパレスチナ人が今後何世紀にもわたって西欧に対して憎しみの感情を残すことこそハマスの戦略だ」と筆者に語った。

ガザ住民の心から抜き取りがたい恨みが醸成され、冷静かつ客観的に情勢を見る目はなくなっている。ユダヤ教にもイスラム教にも存在する報復の正義「目には目を歯には歯を」は、終わりのない憎しみの連鎖による殺戮に繋がっている。

イスラエルに吹く国際的な逆風

世界は、イスラエルの民間人の犠牲をいとわない度を越したハマス殲滅作戦に強い不快感を示しながらも、反ユダヤ主義もよくないとして2つの世論が並行して拡散している。

この2つの矛盾する世論はハマスの世論操作の結果でもある。とくにイスラエルのヨルダン川西岸のパレスチナ自治区への軍を派遣してまでの強引な入植を繰り返す国際法違反は今後、国際的逆風にさらされるだろう。

実は今回のイスラエル・ハマス戦争は、各国に根本的な政治の変化をもたらしている。それが顕著なのは欧州最大のユダヤ社会、アラブ社会を抱えるフランスで、とくに過去の政治的構図が崩壊しつつある。

100年前、フランスの急進的共産主義運動の中にはユダヤ人指導者が多くいた。急進左派「不服従のフランス」党を率いるメランション氏は、今回のイスラエル戦争でイスラエルを支持せず、イスラエルとハマス双方をテロリズムと批判した。ハマスはここでもフランス政治の分断に成功したといえる。

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【米同時多発テロを振り返ってみると…】

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