サウジアラビアを拠点としたアラブニュースが2019年に実施した、アラブ世界に住む人を対象にした調査によると、イスラエルとパレスチナ間の和平合意の実現に向けて最も中立的な調停者の国名を尋ねたところ、回答者の56%が日本を1位に挙げ、次いでEUが15%、ロシアが13%、アメリカは11%、イギリスは5%という結果だった。
イギリスが低いのは、20世紀初頭からイスラエル建国を支持したにもかかわらず、パレスチナ情勢を見て外交政策を変えたことで中東を混乱に陥れた過去があるからだ。
同調査を国籍別に見ると、ヨルダン人は仲介者としてアメリカへの期待感が最も低く、中立的な仲介者と考えているのはわずか4%なのに対して、73%が日本を選んだ。パレスチナ人もまた、リストの中で日本を上位に挙げており(50%)、EUが続いている。
近隣諸国の事情は複雑
イスラエルとハマスの戦争は地上戦に突入し、パレスチナ自治区ガザの犠牲者は1万人を超え、近隣のアラブ諸国に和平調停国としての圧力が高まっている。しかし、近隣諸国の事情は複雑で、早期停戦に向けた動きは限定的だ。
イスラエル北部で国境を接するレバノンは、親イラン過激派組織のヒズボラが政党として政治に食い込んでおり、ヒズボラはハマスの今回のイスラエルへの大規模攻撃にも関与が指摘される。レバノン政府は国境での衝突を最小限に抑えることで精いっぱいだ。
最も期待される南の国境に接するエジプトは、ガザと直接国境を接する唯一の国だが、ガザからの避難民を受け入れれば、避難民に混じってハマス戦闘員も抱え込むことも考えられ、アメリカ、イギリスからの圧力にもさらされる。エジプト国内でもハマスの流入でイスラム過激派が勢いづけば、国内政治も不安定化する。
イスラエルの東部に接し、パレスチナの大義を支持するヨルダンは、ヨルダン人の50%以上がパレスチナのルーツを持つ。イスラム教とキリスト教の聖地である東エルサレムとヨルダン川西岸を統治していたレバノンには反イスラエル感情が強い。
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