イスラエルの歴史学者が語る「ハマス紛争の勝者」 この戦争に勝つのは政治的な目的を果たした側

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イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏(写真:本人提供)
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織「ハマス」がイスラエルへの大規模な奇襲攻撃を仕掛けて以来、激しい軍事衝突が続いている。これ以上の紛争激化を防ぐことはできるのか。『サピエンス全史』著者でイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏(ヘブライ大学教授)の寄稿文を掲載する。

この戦争に勝つのはいったい誰か?

戦争とは、代替手段による政治の継続だ。この決まり文句を口にする人は多いが、それに十分な注意を払う人は少ない。戦争のさなかにあっては、なおさらだ。ハマスがイスラエルで大虐殺を行ない、ガザ地区で一般市民の死傷者が増える一方の今、戦争にまつわるこの深遠なロジックは、戦争が生み出す途方もない悲劇の陰に隠れてしまっている。次々と亡骸が積み重なっていくなか、この戦争に勝つのはいったい誰か? より多くの人を殺害した側でもなければ、より多くの住宅を破壊した側でもないし、より多くの国際的支持を取りつけた側でさえもない。それは、政治的な目的を果たした側なのだ。

ハマスは、具体的な政治目的を持ってこの戦争を始めた。その目的とは、和平を妨げることだ。イスラエルは、アラブ首長国連邦とバーレーンとの平和条約に調印した後、サウジアラビアと歴史的な平和条約を今にも締結しようとしていた。それが成れば、ベンヤミン・ネタニヤフ首相にはキャリアを通じて最高の業績となっていただろう。そして、イスラエルとアラブ世界の大半との間の関係が正常化していただろう。サウジアラビアとアメリカが強く求めたため、その平和条約の条件には、パレスティナに対する大幅な譲歩が含まれることになっていた。イスラエルの占領地域に暮らす何百万もの人の苦しみをただちに和らげ、イスラエルとパレスティナの和平交渉を再開するためだ。

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