ワインの神様が認めた醸造家、天職との出会い方 「逃げ道」があれば挑戦する恐怖心は和らぐ
学校内のワイナリーという「限りなく実践に近い場だけれど、失敗しながら学べる」貴重なポジションであるアシスタントの座をひそかに狙っていたので、地道な努力が報われた瞬間でした。
私が現在働いている『キスヴィン・ワイナリー』と出会ったきっかけもまた、在学中にありました。
当時、好きで書いていた『ブドウ畑の空に乾杯』というブログを読んだ代表の荻原康弘さんから「会いたい」と連絡をもらったんです。
山梨のブドウ農家だった荻原さんは、甲州市内のワイナリーやシャトーにワイン用のブドウを卸していましたが、当時まだ自社で醸造所を持っていませんでした。
「オリジナルのワインを造りたい」と醸造家として私をスカウトしてくれたのですが、ワイン造りにおいては設備も整っていなければ、何の実績もない会社。
1年のアシスタント期間を終え帰国した私は、気乗りしないまま荻原さんのブドウ畑を訪ねました。
そこで見た生き生きとしたブドウと、荻原さんたちのワインへの情熱に一気に心を引かれちゃったんですよね。
この人たちと一緒にやりたい。好きなことを見つけたら止められない、いつもの衝動に突き動かされ、『キスヴィン・ワイナリー』の一員になりました。
醸造家の仕事は「なんでも家」
醸造家の仕事内容を一言で表すと、「なんでも屋」です。
ブドウを作り、ワインを造り、その価値を高めながら売る。
ワイナリーの経営を成り立たせる全工程を担うため、アスリートのように体を使う場面もあれば、お客さまとコミュニケーションを取る場面もありますし、経営の知識も必要です。
そこで感じるのは、今まで興味が赴くままにいろいろなことにチャレンジしてきた経験は、すべて無駄ではなかったということ。
ワインの技術は年々新しくなっており勉強は欠かせないので、高校時代に勉強に打ち込んだ経験も生きていますし、接客の際にお客さまを笑顔にするコミュニケーションを取ることができるのは、お笑い芸人を目指していた経験があってこそ。