同志社大学・太田肇教授の新モチベーション論(第4回)--従業員が従業員を表彰し、モラールが着実に向上
会社の中には、表舞台で仕事をする人や飛び抜けた活躍をするスタープレーヤーだけではなく、地味な仕事をコツコツとこなす人たちも必要だ。彼らが会社を根底から支えているといってもよい。それどころか、業種によっては彼らこそが中心戦力である。
東大阪市に本社を置く株式会社ベル(代表取締役 奥斗志雄氏)は清掃業務や衛生管理を業務とする会社であり、従業員145人のうち現場スタッフ(以下クリーンキーパーという)が130人を占める。
この会社の表彰制度は、そのクリーンキーパーや協力会社など、現場で働く人たちの意欲を引き出すことに重点を置いている。現場の人たちは仕事ぶりや仕事の成果など、認められる機会が少ないからである。
会社の方針に、お客様よし、本人よし、会社よしという「三方よし」がある。表彰も、お客様に喜んでもらい、それによって仕事が増えるとか、他のお客様を紹介してもらうなどして会社の利益が上がり、本人が称賛されるという関係が成り立つよう意識している。
その一つである「最優秀クリーンキーパー賞」は、日常清掃に携わるクリーンキーパーを対象にした賞で、お客様から評価され会社の利益にも貢献したスタッフを候補者として社員が推薦し、本社スタッフの会議によって決定することになっている。
そのほかにも「さすがプロ!!で賞」「報連相が良かったで賞」「いつも明るく元気で賞」といったさまざまな名称の賞がある。いずれも目の届きにくい作業現場を担当社員が見回り、候補者を発掘していく。
特徴的なのは、会社のトップではなく社員が受賞者を選考して、表彰の内容は社員全員で話し合って決め、受賞者にふさわしい賞の名をつけるという徹底した社員中心主義がとられていることだ。そこには、表彰制度を実行していくプロセスを通して社員に自発性や行動力を身に付けさせ、達成感を味あわせようという狙いもある。