「未婚者は"幸福度が低い"」調査の裏側にある真実 果たして「結婚すればしあわせになれるのか?」

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8割近くの若者が不安を感じているその要因を紐解くと、もっとも構成比が高いのは「現在の収入や資産について」よりも「今後の収入や資産の見通しについて」のほうが高く、20代男性の68.2%、20代女性の66.2%を占めます。つまり、今の経済環境よりこれから先の経済環境に期待できないと感じていることになります。

ちなみに、1996年時点の20代と比較しても、全体的に不安感が大きく増していることがわかります。

1996年時点は、まだ給料が少なくても、「やがてはあがるはず」という期待があったのでしょう。会社の上司や先輩を見ても、「あのくらいの年齢になればこれくらいの収入になるはず」という安心材料もありました。わかりやすくいえば若者はお金の心配をそれほどしなくてもよかった時代だったのです。

結婚減や少子化を若者の価値観のせいにしていないか?

しかし、今やそんなことを許さない現実を突きつけられます。40歳になっても経済的につらいという先輩たちを見て、20代に希望を持てというのも無理な話です。

生活に困るほどの困窮ではないにせよ、何より問題なのは、若者自身が自分の未来に不安しか感じられなくなる今の空気感なのではないでしょうか? 不安は行動を委縮させます。

「何をしたってどうせ無駄なのだから、何かすることはリスクしかないのだから、だったら何もしないでおこう」という無行動に若者を向かわせている空気こそが、若者の幸福人口が増えず、結果として結婚意欲も持てず、未婚化や非婚化がさらに進行していくことにつながっているのではないでしょうか。

若者が「恋愛しない・結婚しない・子どもなんていらない」というのを若者の価値観のせいにして納得している場合ではないのです。若者からあらゆる行動を奪う環境しか用意できないほうにこそ問題があるのでしょう。若者の不安を煽る物語しか提示できないほうに問題があるのでしょう。

お金がすべてだとまでは言いませんが、行動するにもお金は必要です。

少子化、少婚化を危機というのであれば、まず若者を覆う不安を払拭し、彼らが「行動できるお膳立て」を整えることが先なのです。

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荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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