「社内政治」「根回し」嫌う人が知らない意外な盲点 立ち回り方を覚えることで得られる利点とは

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僕が起業家・光本勇介さんの著書『実験思考 世の中、すべては実験』でやったのは、本を原価で販売して、読んだ人が価値を認めてくれたらその分を課金してもらう「価格自由」というまったく新しい仕組みだった。電子版は0円、紙版は原価の400円で売り出した。

これは、著者と僕の合意だけではやれない。社内で通すには、関係者全員の理解を得る必要があった。

営業部門の意向は「売上を上げたい、変なリスクは避けたい、社長の指示は絶対」だろう。それに対して今回の企画は「売上は未知数、リスクもある、社長は知らない」。いきなり営業へ持ちかけたら、「できない」で終わってしまう可能性が高い。

利害一致とはパズルのようなもの。つまり、それぞれのピースのカタチを把握し、どの順番でハメれば、自分が見たい絵が完成するかを想像し実行することなのだ。

誰とどの順番で話すかが重要

僕は、まず社長に「めちゃめちゃいいアイデアがあるんですけど、営業と相談してやっていいですか」と持ちかけた。あまりにも漠然としている謎の提案だが、ここでは細かいことは言わない。必要なのは「社長がやってと言っている」という言質(げんち)を取ることだ。

社長は「いいよ、営業と話をしてくれ」と言った。それはそうだ。あまりにも抽象的な提案すぎて断る理由すらない。そのネタを手に「社長がやってと言っている案件がありまして」と営業に話をしにいく。

そうすると「できない」という選択肢はなくなり、どうしたらできるか、という話し合いになる。

同時に著者と話をする。会社としては売上がほしい。原価で売っても1円も儲からない。「価格自由」でいくら課金されるかは未知数だ。一方で著者は「価格自由」をやりたがっていて、それなりに予算を持っている。

そこで「3万部が売れた場合の売上を前金でもらえないか」という交渉を著者にした。「価格自由」で入った分は相殺する形で返していくと。営業とも握って、売上も見込めて、最後にあらためて社長に話を持っていく。

社長の目的は何か。「売上が立つこと、リスクがないこと、幻冬舎にとって価値があること」だ。

売上の目処は著者と握った。リスク回避は営業と握った。そして「こんな新しいことをやるのは幻冬舎しかない。さすが幻冬舎となるはずです」と言い、最後の目的も一致させた。

こうして、全員の利害を一致させていく。結果的に発売して1.5カ月で1億円以上の課金があり、著者の前金は、たったの1日で回収された。

このように関係者のピースのカタチをつかみ、順番を考えてハメていくことで、社内政治は完遂される。

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