子への性犯罪止められるか「日本版DBS」の懸念点 相次ぐ子に関わる専門職によるわいせつ事件の報道

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有識者会議では、事業者が子ども関連業務以外の募集でも応募者にDBSの証明を求めるといった「悪用」も心配されていた。申請窓口において子ども関連業務のみが対象となることを明示し、「悪用」には罰則を科すことも必要だろう。

小さく始めて大きく育てる――運営体制の問題

イギリスのDBS機構は1265名(2021年度)の職員をかかえる大所帯だ。日本版DBSのスタートがどの程度の規模になるのかは未知数だが、事業者からの照会に対して迅速に対応し、重大な個人情報を間違いなく扱えなければならないので、それなりの体制を整える必要がある。

制度が開始されれば、事業者がDBSに関わる義務を果たしているかどうかの調査や指導も行わなくてはならない。

認定事業者のみを対象とする認定制度をつくることで、ある程度、業務量が抑えられるという見込みがあるかもしれないが、事前に認定審査を行ったり認定事業者を管理する業務があるため、むしろ業務量が大きくなる可能性もある。

有識者会議では、まずは制度を小さく始めて大きく育てる構想が語り合われた。しかし、認定制度が本当に「小さい制度」なのかどうか、実際に即した検討が必要かもしれない。

日本版DBSの対象事業・職種の範囲について見てきたが、実はもう一つ大きな論点があった。それは、不起訴や示談、懲戒処分などをどう扱うのか、「犯歴等」の中に含めるのかということだった。

わいせつ事件などの場合、事件になっても不起訴や示談になる場合が多い。また、懲戒免職・解雇になって本人が現場を離れてうやむやになるケースも多いと考えられ、実はこのゾーンに再発防止策をかけるべき対象者がかなりの数でいるのではないかと考えられる。

イギリスでは、性犯罪やわいせつ事件などで解雇した人物に関する通報も受け付けているが、それを「犯歴等」に含めるかどうかの判断には相当の厳密さが必要であり、そのための体制も必要になる。

日本版DBSは、この点をふまえ、厳格な手続に基づき正確性が担保されている裁判所による事実認定を経た「前科」のみを対象とすることとした。これは、制度開始時としてはやむをえないかもしれない。

とはいえ、先行する教員職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律は、前科とならなくても性犯罪等により懲戒処分を受けた教員の免許を公的機関の判断で失効させ再授与をしないことができるようにしている。

これらのケースを「犯歴等」に含むことができれば、学校をやめさせられた前歴者が民間の教育サービスに流れるなどの事態が防止できるのではないだろうか。今後の検討に期待したい。

さまざまな論点はあるが、犯歴をかかえてしまった人々の社会復帰が不当に妨げられることを防止しつつ、子どもの守られる権利を保障する方法を、知恵を集めて工夫していかなくてはならない。

普光院 亜紀 「保育園を考える親の会」アドバイザー

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ふこういん あき / Aki Fukoin

早稲田大学第一文学部卒。保育園に子どもを預けて働く親のネットワーク「保育園を考える親の会」顧問・アドバイザー。保育ジャーナリスト。大学講師。著書「後悔しない保育園・こども園の選び方」(ひとなる書房)、「不適切保育はなぜ起こる」(2024年6月20日刊行、岩波新書)ほか多数。

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