子への性犯罪止められるか「日本版DBS」の懸念点 相次ぐ子に関わる専門職によるわいせつ事件の報道

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より多くの事業者に制度を利用してもらうには、制度が世間全体に広く周知されなければならない。利用者(子どもの保護者)が塾などを選ぶときに認定事業者かどうかをチェックすることが常識になるくらいに信頼され根付くことができれば、事業者も認定を受けざるを得なくなるだろう。

ただし、利用者が自己責任で事業を選択することを終着点とする制度であってはならない。

2014年に男児がマッチングサイトのベビーシッターによるわいせつ行為の犠牲となり死亡する事件が起こった。被害に遭った保護者はシングルマザーで、病気の父親と2人の子どもをかかえ経済的にも苦しい生活を送っていた。

そんな保護者が「ベビーシッターは無資格でもできることを知らなかった」「自治体が実施している夜間保育について聞いたことはあったが忘れていた」と話していたことが印象的だった。

余裕のない生活を送っている人には、行政の情報は届きにくく、サービスを選択するための経済力が備わっていない場合が多い。社会的に不利な状況にある家庭や子どもの「落とし穴」とならないように制度をつくる必要がある。

フリーランスは対象外

個人事業主であるフリーのベビーシッターを利用者とマッチングするマッチングサイトはその後も急激に普及し、2020年にはわいせつ事件も起こっている。

日本版DBSでは、個人が一人で行っている個人事業主については、義務づけからも認定制度の対象からも外しており、完全に制度の対象外となっている。情報の安全な管理などの体制がもてないというのがその理由だ。同様に、フリーの家庭教師なども対象にならない。

イギリスでは、子ども関連業務に従事する個人事業主もボランティアもDBSの義務づけの対象となっており、この点は日本版と大きく違っている。日本版でも、個人事業主もとりこめる形を探っていくことは、今後の課題になりそうだ。

日本版DBSは、イギリスの制度のように、犯歴等のある者の子ども関連業務への就業をあらかじめ禁じるものではなく、当局が犯歴等の情報を提供したうえで、事業者が採否を判断する仕組みになっている。そのため、事業者には犯罪の時期や内容なども提示される。

もちろん、犯歴照会は本人の同意がなければできないので、多くの場合、該当する犯歴のある者は、子ども関連業務への応募そのものを諦めることが予測されるが、そうならなかった場合、事業者は重たく詳細な個人情報を受け取ることになる。

このように深刻な個人情報を扱うということが、日本版DBSで対象が限定される理由にもなっている。しかし、個人情報漏洩のリスクを減らすために対象を狭くしようとするなら、本当に狭い範囲の制度にするしかなくなってしまうのではないだろうか。

例えば、イギリスのように該当犯歴がある者の子ども関連業務への就業を禁止できれば、当局は就業可能かどうかの証明のみを発行し、犯歴等の情報は当局の外に出さないこともできるだろう。

それでも就業不可となった場合の情報漏洩は、罰則を科して禁じなくてはならないが、制度をシンプルにすることで情報の管理がしやすくなり、対象を広げることもしやすくなるのではないだろうか。

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