子への性犯罪止められるか「日本版DBS」の懸念点 相次ぐ子に関わる専門職によるわいせつ事件の報道

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あくまでも再犯を防ぐ制度ではあるが、こういった仕組みが実施されることによる抑止効果は大きいと考えられる。

子どもへの性犯罪やわいせつ事件を起こす者は、子どもに対する性衝動を抑えられない心の状態をかかえていると考えられ、このような制度によって強制的に子どもから遠ざけることは、本人の利益にもなると専門家は指摘している。

学習塾やベビーシッターは義務づけられない?

こども家庭庁では、「こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組みに関する有識者会議」を設けて、6月下旬から日本版DBSについての検討を行った。9月12日には、報告書がまとまり、公表されている。

有識者会議のヒアリングでは、事業者や関係者から制度の対象をできるだけ広くしてほしいという要望が出されていたが、法律家からは、この制度が、憲法が保障する職業選択の自由、営業の自由を制限するものとなることや、犯歴という重大な個人情報を取り扱うものとなることから、公が関与して適切に運用できる範囲を見定める必要があるという見解が出されていた。

最終的に報告書が示した制度(以下、日本版DBS)は、職員等の採用にあたって犯罪歴等の確認を義務づけられる事業者を、①学校や認可保育施設・児童福祉施設等に限定し、②それ以外の民間事業は認定制度によって任意で参加する仕組みになった。

■日本版DBSの対象事業・職種
<事業>
① 義務づけとなる事業者:学校、認定こども園、保育所、児童養護施設、障害児入所施設等の児童福祉施設を設置する者 等
② 認定制度の対象事業者:認可外保育施設の設置者、放課後児童健全育成事業などの児童福祉法上の届出事業者、学習塾、予備校、スイミングクラブ、技芸等を身に付けさせる養成所 等
<職種>
子どもに対し支配的・優位的関係、継続的関係、親等の監視が届かない状況下で養護等をする者(学校の教職員、児童の保育・養護等に関する業務を行う者)*派遣や業務委託も含まれる。
(出所)「こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組みに関する有識者会議報告書 概要」より筆者作成

公的な事業以外の分野が義務づけの対象外となることについて、実効性を疑問視する声も多く聞かれた。子どもを対象とするさまざまな民間サービスで事件が起こっており、そういった公の目の届きにくい分野こそ義務づけの対象とすべきだという意見には一理ある。

民間の教育サービス等の業界関係者によれば、学習塾やスイミングスクールの指導者等によるわいせつ事件は毎年数件ずつ継続して起こっており、経営者を悩ませているという。事業のリスクになっているのだ。公的部門の防止策が強化されると、子どもに近づきたい小児性愛者等が防止策の緩い分野に流れるのではないかという声も聞かれた。

こういった危機感をもつ事業者は、認定制度を積極的に利用してくれそうだが、事業者によって温度差もありそうだ。

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