血糖値が高めの人こそ「朝食が大事」の医学的理由 インスリン分泌を促し糖を調整する食事のコツ

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実は、朝食(すなわちファーストミール)のときに食物繊維を多めにとっておけば、セカンドミール効果(すなわち、血糖値の増加を抑える効果)は、昼食(セカンドミール)時だけではなく夕食(サードミール)時にも観察されます。

十分なセカンドミール効果を得るために、朝食のときに意識して食物繊維を多めにとっておくことが重要です。

「セカンドミール効果」の仕組み

セカンドミール効果が得られる理由は2つあります。

1つは、食物繊維の粘物質が他の食べ物と絡み合い、胃や小腸の中を移動するスピードが遅くなって糖の吸収速度が穏やかになるからです。

もう1つは、「腸内フローラ」が食物繊維を「短鎖脂肪酸」に消化し、腸内環境を整えてくれるからです。腸内フローラでつくられた短鎖脂肪酸は、「グルカゴン様ペプチド-1」(GLP-1)という消化管ホルモンを分泌し、昼食後に血糖が上がる前に先回りしてインスリンを分泌させ、昼食後の血糖上昇を抑えます。

実は、セカンドミール効果を利用すれば、翌日の朝食後の高血糖を抑えることも可能のようです。

1988年、ジェンキンス博士らは夕食に十分量の低GI食品(血糖値を上げにくい食品)をとっておくと、翌日の朝食後の血糖値も抑えられることを報告しています。

●罪悪感なし! 賢いおやつのとり方

2023年、柴田重信教授らは、間食のセカンドミール効果を利用すれば、夕食後の血糖値上昇を抑えられることを発見しています。

12時の昼食と19時の夕食の間、15時か17時におやつを食べると、夕食後の血糖値の上昇が効果的に抑えられました。

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どれくらいのおやつをいつとるのが健康によいのか、間食を上手にとる工夫は、期待の持てる食事法です。

ナッツ類は低GI食品ですので小腹がすいたときのおやつに取り入れるといいでしょう。

ちなみに、宇宙飛行士が国際宇宙ステーションに滞在するときの食事は、朝食、昼食、夕食とスナックの3.5食だそうです。食事のリズムとして、1日3.5食に設定されているのが興味深いですね。

時間栄養学の知恵を利用すれば、いっそう理にかなった食事法になることでしょう。

大塚 邦明 医学博士、東京女子医科大学名誉教授

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おおつか くにあき / Kuniaki Otsuka

1948年、愛媛県伊予三島市生まれ。専門は循環器内科学、高齢者総合内科学、睡眠医学、時間医学。ミネソタ大学ハルバーグ時間医学研究センター特任研究員。宇宙航空研究開発機構(JAXA)客員研究員。九州大学医学部卒業。高知医科大学を経て、1998年、東京女子医科大学東医療センター総合内科教授、2008年、同大学東医療センター病院長に就任。日本自律神経学会会長、日本時間生物学会会長、日本循環器心身医学会会長、世界時間生物学会会長などの要職を歴任。ミネソタ大学との共同研究で開拓したクロノミクス・メディシンを取り入れた「時間治療」の開拓実践に取り組んでいる。

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