上場企業辞め「長友選手のシェフに転身」掴んだ道 きっかけは"夜中3時"に送ったTwitterのDM
SNSでチャンスをつかんだと聞くと、加藤さん自身がSNSで有名な、所謂インフルエンサーだったと想像するが、事実は違う。
「僕は当時Twitterはやっていませんでした。彼に情熱を伝えるためだけにアカウントを作成し、長友選手だけをフォローして、熱意を綴ったDMを送りました。送ったのは夜中3時を過ぎていましたが、思いもよらず、翌日には彼からの返信があったのです。今思えば怪しいですよね(笑)。そんな僕を信じてくれた、長友さんの決断力はすごいと思います」
長友選手は1通のメッセージから、加藤さんの本気を見抜いたのだ。それから数カ月後のイタリア・ミラノで、加藤さんの専属シェフとしてのキャリアが始まった。
肉体コンディショニングと食事の密接な関係
その後の長友選手の活躍は多くの人が知る通りだ。2022年のワールドカップで、彼の年齢をものともしない気力、体力を見せつけたのは記憶に新しい。
「シェフと出会って体が変わった。今が一番動ける」——長友選手自身の言葉だ。
加藤さんは各国でのサポートを続け、現在日本でも週に数回、長友選手に食事を提供している。食事面のサポートは現在8年目。長友選手の近年の活躍は、専属シェフとしての加藤さんの知識と手腕が確かなものであったことを、証明している。
トップアスリートを感動させる程にコンディショニング効果の高い「超回復めし」とは、いったいどのようなものなのだろう? 加藤さんは「高たんぱくで、健康に良い脂質を含む食材を組み合わせること。糖質はほどほどに」することが肝要だという。
ミドルエイジにもなると、糖質オフなどの食事制限を実践している人も多いだろう。しかし栄養学に明るくない人にとっては、食べる量やタイミングを適切に調整することが難しい。食材を制限することにばかり気を取られ、味気ないメニューになったり、体力が落ちてしまったり……ということにもなりがちだ。
加藤さんは栄養面のバランス、そして何より心を潤す味わいを、大切にしている。
「食事は体を作るものであると同時に、日々の癒やしや活力になるものだと思っています。私が食事の機能を考えるとき、肉体と精神両方に活力を与え回復させることを念頭に置いています。ですから『美味しい』ということは外せません」
例えば炭水化物の餃子の皮をタンパク質の油揚げで代用したり、香ばしい焼き目をつけることで、揚げずにザクザクとした食感を演出するなど、加藤さんのレシピには食べる満足感をアップする工夫が満載だ。
「一日働いて疲れたら、ガッツリした食感のものが食べたかったり、餃子で一杯やりたかったりしますよね! そこを我慢せずに、肉体の疲れもケアできるレシピを考えています」
加藤さんが料理家を目指した原点は「おふくろの味」。料理が持つ癒やしの効能も、加藤さんは決して蔑ろにしない。
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