上場企業辞め「長友選手のシェフに転身」掴んだ道 きっかけは"夜中3時"に送ったTwitterのDM
「当時の私は、素材の持ち味を生かしたシンプルな調理法を心がけていましたが、基本的には、お客さんにおいしく食べてもらって、ハッピーな気持ちになってもらえば満足でした。
一方で栄養に関しての知識は乏しく、中澤佑二さんが訪れた時は、オーダーの意図を深く理解できないまま、指定されたとおりに作るしかなかったのです。そんな自分が恥ずかしかった。今までの自分の料理に対する考え方に、違和感を覚えた出来事でした」
それ以降の加藤さんは猛勉強した。健康や身体作りにおける食事の効能を追求し、栄養学の資格を取得。その知識を料理に取り入れ、料理人として新たな境地を切り拓いていった。
「自分が扱うのは体の中に入るものであること。自分の仕事にはお医者さんと同じように、健康や体力に影響を与える責任があると考えるようになったことが、大きな転機となりました。そのことに気づけたことで、自分らしいキャリアの展望が見えたのです」
SNSのメッセージひとつで、長友選手の専属シェフに
栄養学を取り入れた料理を追求するなかで、加藤さんは「いつか必ず一流アスリートの専属シェフになる」という夢を持つようになった。そこには、マーケティングの視点もあったという。
「一流アスリートのサポートをし、その選手が結果を出してくれることが、僕の料理に関する理論を証明すると考えました。当時コンディションを整えパフォーマンスをアップさせる『機能的な食事』を目指して料理の研鑽を積んでいましたが、自分だけが頑張っても、この価値は広がらないと分かっていたんです。
残念ながら今のところ料理人の社会的地位は高くない……当時の自分はそのことが身に染みていて、自分の仕事の価値をどうやって証明するのかというのは、大きな課題だと認識していました。
そこで、僕の作った料理を提供して、そのことによって結果を体現してくれる人が必要だと考えたのです。なかでも厳しい環境でパフォーマンスを発揮し続けなければならないアスリートを食事の面から支えて、二人三脚で肉体改造に取り組みたいと、熱望していました」
その後加藤さんはXのメッセージのやり取りをきっかけに、サッカー選手の長友佑都さんの専属シェフになった。
「当時、長友さんはSNS上で筋肉系のケガに苦しんでいる様子を共有しており、さまざまな食事法、トレーニング、ヨガを試していました。そのことを知るにつけ、彼の取り組みに感銘を受け、彼をサポートしたいという気持ちが強まりました」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら